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もやもや病 2

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14 お饅頭のあんこ

2学期が始まってしばらくしたとき
次男の作文が返されてきた
ずっと日曜日だったら良いのにという短い文が私の目に飛び込んだ…

そんなときに、患者会の知り合いが、病弱児養護学校に通っている話しが届いた

行ってみようと思った
私は、家から1時間半ぐらいかかるそこに、次男と一緒に出かけた
同じ病気のお母さんから、病弱児養護学校の存在を教えてもらったのが、ちょうどその次男の言葉を読んだときと同じ時期だった

中学の先生には相談もなく、次男と2人で、病弱児養護学校を訪ねてみた
家から車で1時間半かかった…

次男はその時に手の空いていた先生に学校の中を案内してもらっていて、私は校長先生とお話しさせて頂いた

おかあさん
今の中学校は、卒業をすることは出来ます
子ども達をおまんじゅうに例えたら
箱の中に出来上がったおまんじゅうが並んでいても、そのおまんじゅうを手にとって割ってみたら、中にあんこが入っていなかったら悲しいじゃないですか
少しでもあんこを入れてあげましょうよ

校長先生のお話がとても良かった
私はここにお願いしたいと思った、次男も見学を終えて、お母さんここなら僕、転校したい、とそう言った
ただ、この学校に通うには、隣にある病院に入院してベッドから学校に通うのが条件だった
次男は家から離れての入院生活でもそれでも良いと言う

話を進めてしまってから、今在籍している中学の先生にお話をした
先生はとてもビックリされていた

この学校で、友だちも居ないところで頭が痛いと保健室に逃げているような状態より、その学校に行く方が良いと思っていると伝えたら

お母さん、友だちは居るじゃないですか
早退するときだって、みんな、次男ちゃんばいば~いって手を振ってくれてるじゃないですか…

女性の担任はそう表現した…

小学校も中学校も、挨拶運動というのが徹底していて、朝礼のたびに、お客様がこの学校の生徒は素晴らしいと褒めて帰られたと言う話がされていた

だから、私が学校に迎えに行っても、あちこちから、こんにちは~の声が乱れ飛んだ、そののりで、次男ちゃん、ばいば~いは当然の声かけだったと思っている
中学2年生、学期の途中での転校だった
このバイバ~イという声かけだけで、先生は友だちというのかと、なんだか笑いたいくらいおかしかった

この先生が、その後何年もして4月の移動で中学校の校長になったと顔写真入りで新聞に出ていた
そうか、出世したかった先生なのかと、あらためて思った

この先生が、私が嫌いになった言葉、継続は力なりと、やたらに言う先生だった…
小さないじめや無視も、継続していたら大きな力になって、子どもは逃げ出すか不登校になるかしかなくなるんじゃないかと、皮肉に思っていた
病棟に入るために、診察を受け、許可されて、2人部屋の同級生の男の子と同室になった
田舎に向かって走る高速道路だったから、私でも通うことが出来たのだけれど、家から1時間半の道をこの1年半の間に何往復したか…
月曜日の朝、授業に間に合うように次男を家から乗せてきて
水曜日に面会に行き、土曜日に次男を家に連れて帰ると言うことになった

最初に病棟に行った時、訓練と称して縄跳びを跳ぶことになっていると聞かされた、いきなり千回
私はビックリして、この子に縄跳びを跳ばせることを病気のことはわかっているのかと保母さんに話をしたが…そう?いけなかったんですか?でもみんなにさせていますから…と

病気の講演をして下さった先生が、運動も少しずつ様子を見てするように、今日このくらいして大丈夫だったら明日はまた少し増やしていくように…とそう聞いていたので
次男がいきなりとんでしまった縄跳びをいまさら制限する必要はないと判断してそれ以上のことは言わなかった…

でも、次男の病気のことを理解しては居ないと言うこと、良くわかった…

おやつ代を預けること、クリスマスの時には保母さんが考えてプレゼントを用意するのでそれについてはお金を出してもらうこと…などその都度聞きながら、次男を預けることになって
しばらくしたら…

隣のベッドの男の子が私に話をする
今日も、保母さんにたたかれちってよ…
○○君なんか俺よりひどく叱られてたたかれるんだよ…
次男に聞いてみても、僕はそんなことはないという
保母さんに怒られた子どもは9時に保母さんが居なくなってからもっと年下の子のオモチャを取り上げ泣かすらしい
そしてその子ども達の多くが、親が来ないと言うことだった…

私は、週3回行かないわけには行かなくなった…
この子は私の大切な子どもです、預けっぱなしに出来るような居ても居なくても良い子ではありません…そういうことを何となくアピールしたい気がした
親の姿勢で、もしかしたら対応が変わるのかもしれないと

学校のクラスは、8人…
心臓病、腎臓病、ぜんそく、心身症、軽度発達遅滞…
と言うような顔ぶれだった

幼い次男は、その中にすんなり入り込んだわけではない
同じことをしていても、右手の麻痺の動作が遅いことも、言葉遣いのとんちんかんなこともあって、他の7人の中で何か言っても、おまえ馬鹿じゃないの?と言われるようなことはあった…
でも、それは、今までの完全無視とは違う、馬鹿じゃないの?と言われても、そこには交流があった…
次男より病状の重い人に対して、次男が手助けできることもあった
40人の中の1人という立場と違って、8人の中の1人は大きな比重だったと思う
この学校に行っている間、次男は学校をやめたいと言ったことはなかった

作品名:もやもや病 2 作家名:とことん