1 shot, 1 scene.
雨降る夜に
黒い空。
どこまでも暗闇が広がっている。
ただただ天蓋は黒に覆われ、どこか不気味ですらある。
そこから落ちてくるのはいく粒もの水滴。空が流す涙は、地面を自らと同じように黒く染め上げ、小さな湖をあちこちに作っていく。
途切れない雨音は旋律のように夜の空間へ響き、何かを慰めるような寂しさを奏でている。
その中に立ち尽くす姿がひとつ。
少女である。
呆然と、水が滴ることすら気づかず俯いている。俯いていても漏れる声は、鳴り続ける水音が消してくれる。
ふと、彼女を隠す水のベールが遮られた。
「なにしてんだよ」
見上げれば、傘をもった少年。
思わず抱きつき、大声をあげる。
少年は何も言わず、無愛想なまま傘の向こうを見上げた。
彼はなにか口を開いたが、彼女の慟哭にかき消され、虚空へと吸い込まれていった。
そんな、物語の1シーン――。
作品名:1 shot, 1 scene. 作家名:空言縁