「月ヶ瀬」 第十六話
5月5日に茶畑で仕事をしていた清一の妻、由美を和田は見つけて声をかけた。
「久保清一さんの奥様ですね?私は京都から来ました和田と言います」
「和田さん、はい、何でしょう?」
「手が離せ無いようでしたら、休憩される時間まで待っていますから遠慮なく言ってください」
「そうですか、三十分ほど待ってもらえますか?」
「構いません」
「では、下の集配所の椅子に座って待っててください」
言われた通り和田は積んだお茶を集める小屋の前のベンチに腰を下ろした。
新茶のシーズンなので丁寧に手で詰まれてゆく。今日採れたお茶は高級なんだろうと思いながら眺めていた。
「お待たせしました。ここでは話にくいやろうから、家に来てください」
「ありがとうございます。では遠慮なく」
清一のいない家に通され、玄関先で腰かけて話しを始めた。
「私は弁護士をやってます。東京の山崎っていう以前ここに来たことがある弁護士の義理の兄です。今日は弟に頼まれて交通事故のことで聞きたいことがあるんで寄せてもらいました」
「山崎さん・・・事故・・・そうですか、どないなことやろ」
「納屋の前に停めてある軽トラックは新しいですね?」
「はい、半年ぐらい前に買い換えたんです」
「故障したんですか?」
「いえ、古くなって・・・調子が悪かったから」
「こんなこと言ったら怒られるけど、古かったんじゃなくへこみが出来たか、縁起が悪くなって買い替えたんと違いますか?」
「何言うたはりますのん。調子悪かったからです」
「販売店に聞いたら、下取りの車はまだ新しかったと言いましたよ。それに、山崎の事故から直ぐに買い替えていることは、何か不都合を隠すためとちゃいますか?」
「私が山崎さんとやらを撥ねたって言われるんですか?証拠もないのに」
「証拠は買い替えです。問題は誰が運転してたのかということです。奥さん、正直に話してくれませんか?すでに奈良県警の警部が動いてくれているから隠すと後でえらい目に遭うかも知れませんよ」
「脅したはるんですか?警察が来てもやましいことなんかあらへんし」
「実はもう一つ岡崎康代さんの娘さんに頼まれて調べていることもあるんです。そっちの方が久保さんには都合が悪いことになるかも知れませんね。事故のことが未解決になるんやったら、せめて初江さんの真実を突き止めなあかんと思ってます」
「岡崎康代さん・・・初江さんの真実・・・」
「久保清一さんの奥様ですね?私は京都から来ました和田と言います」
「和田さん、はい、何でしょう?」
「手が離せ無いようでしたら、休憩される時間まで待っていますから遠慮なく言ってください」
「そうですか、三十分ほど待ってもらえますか?」
「構いません」
「では、下の集配所の椅子に座って待っててください」
言われた通り和田は積んだお茶を集める小屋の前のベンチに腰を下ろした。
新茶のシーズンなので丁寧に手で詰まれてゆく。今日採れたお茶は高級なんだろうと思いながら眺めていた。
「お待たせしました。ここでは話にくいやろうから、家に来てください」
「ありがとうございます。では遠慮なく」
清一のいない家に通され、玄関先で腰かけて話しを始めた。
「私は弁護士をやってます。東京の山崎っていう以前ここに来たことがある弁護士の義理の兄です。今日は弟に頼まれて交通事故のことで聞きたいことがあるんで寄せてもらいました」
「山崎さん・・・事故・・・そうですか、どないなことやろ」
「納屋の前に停めてある軽トラックは新しいですね?」
「はい、半年ぐらい前に買い換えたんです」
「故障したんですか?」
「いえ、古くなって・・・調子が悪かったから」
「こんなこと言ったら怒られるけど、古かったんじゃなくへこみが出来たか、縁起が悪くなって買い替えたんと違いますか?」
「何言うたはりますのん。調子悪かったからです」
「販売店に聞いたら、下取りの車はまだ新しかったと言いましたよ。それに、山崎の事故から直ぐに買い替えていることは、何か不都合を隠すためとちゃいますか?」
「私が山崎さんとやらを撥ねたって言われるんですか?証拠もないのに」
「証拠は買い替えです。問題は誰が運転してたのかということです。奥さん、正直に話してくれませんか?すでに奈良県警の警部が動いてくれているから隠すと後でえらい目に遭うかも知れませんよ」
「脅したはるんですか?警察が来てもやましいことなんかあらへんし」
「実はもう一つ岡崎康代さんの娘さんに頼まれて調べていることもあるんです。そっちの方が久保さんには都合が悪いことになるかも知れませんね。事故のことが未解決になるんやったら、せめて初江さんの真実を突き止めなあかんと思ってます」
「岡崎康代さん・・・初江さんの真実・・・」
作品名:「月ヶ瀬」 第十六話 作家名:てっしゅう