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てっしゅう
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novelistID. 29231
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「月ヶ瀬」 第十四話

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「はい、木津に居ると思うけど。ちょっと昔やからもう居らへんかもしれんね」

「役場で調べるわ。助かったわ、よう話してくれた。礼を言うよ」

「私にはかまへんけど、和田さんが早く見つかるとええね」

5月15日、佐藤は木津市内に住む久保の妹、高木紀美子を訪ねた。
仕事先の許しを得て、応接室で対面した。

「奈良県警の佐藤と言います。急に訪ねて来てすんまへんな。ことは急を要するのでご理解してください。いろいろ聞きたいんやけど、今月の5日に高木が旅館を辞めて行方不明になってますねん。知ってはりますか?」

「夫が?行方不明なんですか?」

「そうなんです。家にも居らへんし、誰に聞いても知らへんって言うのでこまってますねん。奥さんなら知ってはるんとちゃうかって思いまして来ました」

「もうここ数年会ってませんから、分かりませんね」

「そうだったんですか・・・別居の理由は何ですのん?」

「聞きはったんと違いますか?」

「詳しくは分からへんからここに来たんです。月ヶ瀬に住んでいる誰かと仲良くしてたって言うことやけど、相手の人教えてもらえまへんか?」

「言うてもええけど、警察が調べるような事件とどう関係があるんか教えてもらえませんか?」

「実は私の友人で弁護士がある事件のことで調べていたんです。その彼が5日から行方不明になって、同時に高木も仕事辞めて行方不明になって、あなたのお兄さんと奥さんも同じ日に行方不明になっている。変やと思いませんか?」

「お義姉さんも行方不明って意味が分からへんし・・・」

「清一が何か大きなことを隠してて、その件で奥さんが友人の弁護士に何か話したとしたら、都合悪くなって連れ去ったって考えられるんや。問題はどこへ隠れているのかと言うことやねん。何かちょっとでもヒントになることがあったら教えて欲しいんや」

「大きなことを隠している、兄が?なんやろ。最近会ってないから良く分からへんけど、私が親しくしてたんは・・・会田っていうひとや。兄とは親しくしてたから顔は昔から知ってた。奥さんが居やはらへんから、それとなく可哀そうに感じて・・・夫が五十ぐらいからあっちがダメになってモヤモヤしてたことは確かですわ。こんな恥ずかしいことこの年になって言わなあかんやなんて・・・運が悪いわ、ほんまにずっと」

「なんやて!会田か」

「知ってはりますの?」

「その会田が今回の事件の重要参考人や。何度訪ねても家に居らへんし、誰に聞いても知らんって言いよる。村で嫌われているんと違うか?」

佐藤はこの後、紀美子から重要な証言を聞くことになる。