赤襟の清ちゃんと、三毛猫のたま 46~49
「それだけなら、普通のことでしょ。
死んだ人をお迎えして送り返すだけなら、生きている男女のことは、
まったく、関係ないと思います」
「この子ときたら。何も分かっていないね。
いいかい清子。
盆踊りには娯楽や、出会いの要素が含まれているの。
人の結びつきを深める場になるのよ。
帰省してきた人たちの再会の場、男女の出会いの場という意味もある。
盆踊りの歌詞の中に、色恋ものや、きわどい内容が多いのも、
実はそのためなのよ」
「そういえばそうです。そんな歌詞を、おぼろに聞いた覚えが有ります」
「年に1度の盆踊りに、ひとびとはいろいろな思いを託す。
盆踊りの晩(旧暦7月15日)は、満月にあたる。
そのため照明のない時代でも、明るく過ごすことができた。
月の引力せいで、人の気分が高揚する。
盆踊りは、祖霊になった人と別れを惜しむ踊りだけど、
同時に、出会いと別れを惜しみ、過ぎて行く夏を惜しむための
踊りでもあるの。
子供達は無邪気に大はしゃぎする。
だけど大人達は、様々な思いを胸に抱いて一晩中踊るのさ。
だからね。盆踊りは楽しさだけではなく、どこか切ない踊りでもあるの」
「なるほど。
盆踊りの中で、お二人が切なくなればいいわけだ!」
「そういうことだ。でもねぇ、清子。
せつなくなる中身がどういうことか、お前は、解っているんだろうねぇ?」
「男女のことなら、たいていは分かります。
ああなったり、こうなったりしながら、上になったり、
下になったり・・・・。
あ、すんまへん。口ではどうにも上手くが説明できません!」
「あはは。
そうだよねぇ、私もそのあたりは、よう解らん。
私が考えているのは、盆踊りを上手く利用して、あの2人を公然と、
デートさせてあげたいということや」
「デートさせるあげる?。
どう言う意味ですか。私にはよう分かりません?」
作品名:赤襟の清ちゃんと、三毛猫のたま 46~49 作家名:落合順平