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赤襟の清ちゃんと、三毛猫のたま 46~49

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 1907年。内務省の裁定により、飯豊山までの参詣道は一ノ木村の土地として
正式に認められた。
現在のいびつな形の福島・新潟・山形の県境は、これに由来する。
参詣道は、三国岳から御秘所(おひそ)、御前坂に至る4キロメートルの間は
幅約91センチメートル(3尺)。
飯豊山頂と飯豊山神社付近は、最大300メートルほどの幅になっている。


 「幅が1m足らずの県境の道が、7キロ以上も続いていくのですか。
 災難ですなぁ。
 へその緒のような道を長々と打ち込まれてしまった、新潟県と山形県が」

 「あはは。そういう言い方も確かにあるね、清子。
 でもね。飯豊山は神聖な山だ。
 喜多方に生まれた男たちは13~4歳になると、一人前の男の証明として、
 この山へ登山するんだ」

 「山岳信仰のようなものですか?」

 「登拝するときは飯豊山神社が発行した「鑑札」をもつ、地理に詳しい
 地元の「先達(せんたつ)」が、一般「道者(どうしゃ)」たちを
 引き連れてお山に入る。
 それぞれが白装束に身をまとう。
 塩、洗米、お金などを入れた頭陀袋を首から下げ、唱え言をあげながら
 登っていく。
 先達は道者たちに指示を与え、山での戒めを説く。
 危険なところでは、ワラ草履のヒモをきつく結ばせる。
 『御山晴天』『米をまかんしょ~』と唱え、安全祈願のために米をまく。
 道者を送り出したふもとの家では、生ものを絶ち、草刈りなどの
 金物を使う仕事を避けて、登山の安全を祈った。
 お山から戻ると、神社にお礼参りして無事を祝ったものさ」

 「え?。ということは、市奴姐さんも、飯豊山へ登ったのですか!」

 「あたりまえだ。あたしゃこう見えても男だよ。
 飯豊山は近年まで女人禁制のお山だった。
 江戸時代。禁を破って飯豊山中に入った小松のマエという女が、
 神の怒りに触れ、石に変えられたという伝説が有る」

 「じゃ、あたしと10代目が登山したら、石に変えられてしまうのですか!」
 
 「大丈夫だよ、心配しないで行っといで。
 時代はすっかり変わった。
 女性でもいまは、大手を振って登れる山だ。
 山上に咲き乱れるお花畑は、想像を絶するほどの美しさを持っている。
 きっと病みつきになること、請け合いさ」


(50)へ、つづく