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俺はキス魔のキッシンジャーですが、何か?【第三章第一話】

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「私は饅頭人に食べられた。だからもうどうなってもいいと思ったわ。自暴自棄ってヤツね。私を食べた饅頭人が防腐剤を持ってたの。自暴自棄になり防腐剤をばらまいてやったわ。人間界は饅頭人で大混乱。ここの空気は汚れてるけど、森林浴したような気分になったわ。味のない空気がおいしいかどうかって、やっぱり脳で知覚するんだと実感したわ。」
「ははは。」
「なにがおかしいのよ。気でも違ったの?」
「お前はちゃんと空気が読めるんだなって思ったんだじょ。」
「またそんな上げ足取りして。スカートの中身でも見るつもり?」
「ははは。ますます面白いことを言うじゃないきゃ。そういう言い方してれば、狭いストライクゾーンだけど、ファンはいるじょ。」
「ファンってなによ。そこにいる女の子を狙うロリコンのようなもの?」
「妾はただの女の子ではない。幼女スキルを極めた幼女じゃ!」
「話し方からすると、幼女というより、年配者みたいね。」
「バカにするでない。幼女はトシをとらんのじゃ。トシはどこかに置いて来たんじゃ!」
「おいおい。初めて聞いたじょ。つるぺたはトシ老いた幼女だったのきゃ?」
「ぜんぜん違うわ!あははは。あんたたち面白いわ。」
オートロックのドアがスーッと開いた。
エレベーターに乗って女子の部屋に入る大悟たち。明かりがなく、カーテンを閉めきっており、すべての壁が真っ黒なので、昼間なのに部屋の広さもわからない。
ドアが開かれた。黒く長い髪で顔の半分を隠した女子。黒いワンピースを着ている。片方だけが見える目は意外に円らである。肌は浅黒く、服に似合っている。
「これをどうぞ。手ぶらでは失礼だからにゃ。」
「ケーキ!久しぶり!」
「外出してないと聞いたからにゃ。ケーキは宅配便もないだろうし。」
「妾の分はあるんじゃろうな。なかったりしたら全妾が泣くぞ。」
「大丈夫だじょ。つるぺた幼女でも女子。女を泣かすのは趣味じゃないにゃ。」
「気が利くわね。やっぱりあなた、面白いわ。人としゃべるの、苦手なんだけど、あんたは初対面って感じじゃないわ。」
「それは光栄だ。女に誉められるのは趣味だからにゃ。」
「臭いセリフ言っても何も出ないわよ。」
「いや、お前が話してくれていることが、お礼のつもりだりょ?」
「べ、別にそんな気持ちなんてないわよ。」
「じゃあ、お礼の代わりにひとつくれないきゃ。」
「なによ。」
「名前を教えてくれたらありがたいにゃ。ちなみにオレは宇佐鬼大悟だじょ。」
「黒霞雨(くろかめ)よ。」
「黒霞雨は饅頭人居住区の区長なんだりょ?」
「正確には私を食べた饅頭人が黒霞雨だけどね。今は精神融合してるみたい。」
「黒霞雨に頼みたいことがありゅ。オレの幼なじみが饅頭人に食われて、防腐剤を投与しているが、間もなく命が消えてしまう。黒霞雨の力で、楡浬を救ってくれないきゃ?」
「ふ~ん。そういうこと。その子って、あんたの何なの?」
「あまり言いたくはないが、いちおう、オレの許嫁だじょ。」
「あらあら、それはたいへんだわね。ならばいいわ。助けてあげる。」
「そうか、ありがたいじょ!」
「でも条件があるわ。」
「何でも言ってくりぇ。オレにできることならどんなことでもやってやるじょ。」
「それはいい心がけだわ。じゃあ、カンタンなことをお願いするわ。」
「カンタンなこと?」
「そう、超カンタン。私と結婚して。」
「そうか、そうか。それはカンタン・・・じゃにゃい!」
「じゃあ、助けなくていいのかな?私の気持ちは秋の空よ。すぐに変わってしまうわよ。」
「むむむ。困ったじょ。」
「ショタイゴちゃんよ。覚悟を決めるしかないじゃろう。」
「仕方ない。その話、乗ることにすりゅ。」
「交渉成立ね。じゃあ、明日、その許嫁、いや元許嫁を連れてきて。あっと、その前に結婚するなら、そのからだでは不都合があるから、元に戻してあげるわね。」
 黒霞雨が呪文を唱えるとショタイゴちゃんのからだがみるみる大きくなって、元のサイズになっていた。
「さずが区長の魔力はすごいのう。でもそれだけに怖いヤツじゃ。」
 大悟にはこれからのことが重くのしかかり、からだが復活した喜びは感情という形になることはなかった。