小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

カクテルの紡ぐ恋歌(うた)Ⅸ

INDEX|7ページ/36ページ|

次のページ前のページ
 


「イルミネーションの『海』か。綺麗だろうね」
「来るときに通った大通りを少し行った所の、高いビルの裏手なんですけど……」
「すぐそこの?」
 日垣は、椅子からわずかに身を乗り出して、客やバーテンダーたちの影の向こうに大きく広がる窓の外を見やった。星のない夜空の下で、無数の街灯りが瞬いている。その中にひとつ、ひときわ高い光の塔がそびえていた。
「今日も、やっているかな」
「たぶん……」
 美紗が答えると、日垣は腕時計をちらりと見た。十一時半を少し回ったところだった。まだ、終電までには一時間ほどある。
「酔い覚ましに、少し歩こうか」
 優しげな眼差しに、美紗は、はにかんで頷いた。残り少なくなったマティーニをそっと口に含むと、恍惚にも似た心地よさが身体中に沁みていった。