⑥残念王子と闇のマル
その頃、城が少し遠くになり、沿道の人々の数も減ったところでカレンは星を止める。
ゆっくりと後ろを振り向き、カレンは意思の強い瞳でハッキリと言った。
「必ず迎えに来るから、何も心配するなよ。」
理巧は、そんなカレンの横顔をジッと見つめポツリと呟く。
「もうちょっと早く言えば良かったのに。」
「え?」
カレンが小首を傾げると、理巧の冷ややかな黒水晶がエメラルドグリーンをとらえた。
「さっき、せっかく姉上いたのに。」
カレンは、はじかれたように後ろをふり返る。
「どこに!?」
カレンの目の高さに腕を伸ばすと、カレンは遠くの木を指差した。
「ちょうど沿道の見送りが一番華やかだったところの樹上にいました。」
カレンは目を凝らしてそちらを見つめた後、理巧をうらめしそうにふり返る。
「なーんで教えてくれないのさ。」
「姉上が、教えるなとおっしゃったので。」
カレンは口をへの字に結ぶと、腕組みをした。
「おまえの主は、今は僕だろ?なんで僕の指示を仰がないのさ。」
理巧は少し考えて、小さく頷く。
「そうでした。以後、気を付けます。」
意外に素直な答えが返ってきて、カレンは驚いた。
「理巧って、もう少し扱いにくいかと思ってた!」
カレンの言葉に、理巧が大きく頷く。
「よく言われます。」
無表情で答える理巧に、カレンは肩を揺すって大笑いした。
晴天の夏空に、カレンの金髪が煌めいていた。
(つづく)
作品名:⑥残念王子と闇のマル 作家名:しずか