⑤残念王子と闇のマル
それが、不幸になるどころか身を守るのに役に立ち、ありがたいと言われた今の父上の気持ちを考えると、私の目頭も熱くなってくる。
「…そ。」
理巧に向けてやわらかく三日月に細められた黒水晶の瞳を、母上が碧眼を潤ませながら見つめた。
「ま…状況はわかった。」
銀河叔父上の声に、皆がもう一度座り直す。
「麻流。」
楓月兄上が、真っ直ぐに私と向き合った。
私も自然に、姿勢をただす。
「カレンと別れろ。」
「…は?」
思いがけない言葉に、すっとんきょうな声をあげてしまう。
「…そうね、そうしないといけないわ。」
母上がそこに加わった。
「カレンの子と断定できない状態で、妊娠は明かせねーだろ。」
父上も加わる。
「とりあえず、明後日からカレンは虹の都だ。」
楓月兄上が小さく頷きながら、私に鋭い視線を向けた。
「おまえはもう、カレンに会うな。」
「!!」
焦る私の腕を掴んだ父上は、理巧をふり返る。
「カレンが国に帰るまで、おまえが専属で護衛しな。」
頭領の命令に、理巧は頷くと姿を消した。
「待ってください!カレンの子どもの可能性も…」
「あいつは、王位継承者だ。」
必死ですがる私の言葉を、父上が鋭く遮る。
「おとぎの国の王家に、カレンの子じゃない可能性のある子どもを入れるわけにはいかない。」
父上はそこで一呼吸おくと、私を真っ直ぐに見つめて言った。
「カレンとは、別れろ。」
(つづく)
作品名:⑤残念王子と闇のマル 作家名:しずか