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俺はキス魔のキッシンジャーですが、何か?【第二章・第二話】

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ここは地獄の『灰兎学園生徒会室』である。グレーのセーラー服に、灰色のウサミミを付けた女子生徒が10人ばかりいて、『ロの字』型に机を汲んで、議論を展開中である。
生徒の中にひとりメイド服が混ざっており、ホワイトボードの前に立っているのが見える。群青色の長いエプロンドレスに漆黒のタイツに、山吹色のショートヘアのメイドである。白いヘッドドレスには灰色のウサミミが確固たる存在感を示している。
ボードの前で中心に座っている女子。その長机にはひとりしかいなく、異彩と威厳を放っている。彼女はバイオレットのロングヘアを二本のロールにして流し、少し細長い顔に鋭い眼光が引き立っている。グレーのセーラー服には、サングラスをかけて目付きの悪そうな兎のエンブレム付きである。彼女の頭部にも灰色のウサミミが乗っている。
「饅頭人が居住区から脱出して、乱暴狼藉を働いているという事件は相変わらず続いているようですわね。その結果、その脱出饅頭人を人間界へ送り込まざるを得ないことになっています。これは『桃太郎騒擾』以後安定している地獄と人間界の関係を悪化させかねないゆゆしき事態ですわ。人間界から魂のみを送るということで和平協定を結んでから久しいですが、人間界に協定破棄の口実を与えかねません。」
「華莉奈お嬢様。饅頭人の強制移動は地獄の平和維持のために仕方のないことです。」
「それはそうですが、人間界からのクレームはありませんの、ワタクシはクリームをお尻に塗るのは好きですが。」
「お嬢様。ご自身の奇妙なシュミと政治案件を混同しないでください。」
「コンドー?穂芙良もエロくなったものですわね。ぽっ。」
「お嬢様。顔を赤らめて乙女モードを演出してもムダです。とりあえず現時点ではクレームはありませんが、気になる動きがあります。」
「ソノ気、ナンノ気、気になる、気になる、男子は夜に木になる♪」
「お嬢様。カタカナを使用されますと微妙にエロティシズムを感じますのは『木の精』でしょうか。私にもお嬢様ウイルスが伝染してきたようです。木を切り倒して、説明します。地獄に生身の人間が侵入してきたようです。」
「ナマでやるんですの?」
「お嬢様の言葉を完全ガードさせていただきます。三途の川、通称サンクスロード10丁目付近に人間が2名侵入したようです。」
「アソコはラボコンビニ店があるところじゃありませんの。防御システムをどうくぐりヌイたのでしょうか。」
「いちいち無用なカタカナ変換はおやめ下さい。あの場所が人間界への入り口ということを知っている人物が関係すると思われます。」
「そうなると人物はかなり特定されてきますわね。そうですか。あの娘が絡んでいるのは間違いないですわね。それでは地獄に来たという人間をしっかりマーキングしてくださいな。」
「お嬢様。マークだけすればよくて『キング』は余計です。」
「まあ、キングサイズ好みとは、穂芙良も隅に置けませんわね。てれり。」
「お嬢様。隅どころかど真ん中に置いてるではありませんか。」

 地獄の生徒会でエロがかった議論がなされていた時、大悟と騙流がコンビニにやってきていた。
大悟は騙流をお姫様抱っこしたまま、騙流のナビゲートに従って、目的地付近にようやくたどり着いた。いくら小柄な騙流とはいえ、腕に抱えたままというのは、おんぶよりも疲れるし、歩くスピードも遅くなってしまう。
「はあはあはあ。一戦交えた後だし、ホント疲れた。地獄は怖そうなところだから、てっきり町外れの、やさぐれた場末スナックが入口だと思っていたが、こんなに学校のすぐ近くで、人通りの多いところだったとは。しかし今日はやけに人が多いなあ。みんな同じ方向を向いている。ナツコミでもやってるのかなあ。池袋駅の通勤時みたいだな。」
《人たくさんいる場所という点に、意味ある。だんまり。》
「そうか。人目が多いほど、迷彩服のように、目立たなくなるということか。ポッチを隠すには絶好のロケーションというわけだ。授業で教師に当てられる可能性を極小化するのと同じだ。しかし、モブの中には美少女がたくさんいるが、やっぱりヒロインには負けてしまう。だんだんむなしくなってきた。」
《いや、それ違う。まるも、どちらかというとモブ属性だけど、かなり目立ってる。そんな話、どうでもいい。だんまり。》
こうして、大悟と騙流は地獄の入口だというコンビニに入ろうとした。大悟の目に入ったのは赤い看板で、『穂芙良』と書いてある。中国地方を中心に展開する中堅のコンビニチェーン店っぽい名前だが、あくまで漢字名。まったく別物である。
大悟は店を目にした途端、異様な客入りに我が目を疑った。とにかく客が多い。それが雑然としてはいなくて、キッチリ行列を組んでいる。先ほど外に人が多いと思ったのは、この行列の繋がりだった。つまり列があまりに長過ぎて、外にまで溢れ出していたため、ただの人混みと勘違いしたのである。
「これはスゴい客の数だ。一等が出た宝くじ売り場で、絶対に当たらないのに、夢だけを買う客が並んでいるかのようだ。」
コンビニ店内は1000平方メートルくらいある。これは小型の食品スーパー並みの広さである。よく見ると、レジも10台ある。そこに赤い帽子に赤い制服の女子店員が立っている。これだけなら普通のコンビニと変わりがないが、ひとつ大きな違いがある。カウンターから下がすべてアクリル製で、店員の全身がクリアに見えているである。
10台のレジには中高生らしき多数の男子が並んでおり、店内の列も10あった。異様なことに、全員が上気した顔で、手に小さな赤い箱をひとつずつ持っていた。すべて同じ箱なのも変である。コンビニだからそんなにたくさん買う物がないのは普通であるが、さらにどの購入品にも銀色シール5枚か、金色のシール1枚が貼られていた。シールには、ミニスカの女の子が右手でVサインしながらウインクしているイラストが描かれている。左足を上げていて、そこから健康そうな太股がチラリと見えている。
 レジにいるのは小さな軍艦巻き形の赤い帽子を被った数人の女子店員。襟の付きの赤を基調とした制服に、バーニングレッドのミニスカート姿。彼女たちは忙しそうにからだを動かしている。・・・コンビニレジでは動かすのは『手』だけでは?しかし、彼女たちは『全身運動』を展開中である。
《ここ、まるのバイト先。だんまり。》
「そうなのか。じゃあ、あの箱のことを教えてくれ。」
《このコンビニのレシート、くじ付き。レシート出てきた時、当たれば銀色のシール、大当たりなら金色のシール、貼られている。銀色ならば5枚、金色なら1枚で、『当店オリジナルサービス引換えボックス』購入、可能となる。だんまり。》
「そのなんとかいう引換えボックスは、いくらで売ってるんだ?」
《1個1万円。だんまり。》
「1万円!コンビニでそんな高価な物が売ってるだと。信じられない。その中身はさぞかし豪華賞品なんだろうな。」
《中身、空気。だんまり。》
「はあ?それって、ぼったくりじゃないか?」
《そんなことない。この店のオリジナルサービス、男子に大いなる夢を与える、いや夢を買っていただくもの。だんまり。》
「男子の夢?」