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てっしゅう
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novelistID. 29231
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「月ヶ瀬」 第二話

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「兄さんは地元だから顔が聞くのね。弁護士ってこういう時に警察内部に知り合いがいるということが助かるのよね。夫は東京だから月ヶ瀬では相手にされなかった。事故の時も警官は当たり前の事だけ聴いて、最後は村のみんなは口が重いから難しいだろう、って言っただけだったからね。東京じゃ考えられない」

「仕方ないやん。江戸時代からずっと守られてきた因習だろうし。依頼人の夫婦は東京やったね?一度会ってみたいんやけど、お前が帰る時に着いて行っても構まへんか?」

「ええ?そうね、じゃあ、夫に依頼人に連絡するように伝えるわ」

静子はそう言うと電話を借りて夫に掛けた。

「もしもし、あなた?無事に着きましたよ。兄にはお願いしましたので安心なさってください。それでね、依頼人に会って話が聞きたいと言うのよ。明日一緒に兄と帰るから、依頼人さんに伝えておいて下さらない?」

「無事着いたのか、良かった。さっそく動いてくれるというんだろう、有り難いね。依頼人も喜ぶよ。今から電話しておく。明日にでも会えるだろう。お兄さんによろしく伝えておいてくれ」

「わかりました。では、明日ね。おやすみなさい」

「うん、早いけど、お休み」

和田保と山崎静子が東京に着いたのは翌日の3月11日午後だった。
新幹線口を出て、在来線に乗り換えて、静子は自宅へと和田を案内した。

「ご無沙汰をしています。良く来て頂きましたね、ありがとうお兄さん」

「元気そうやないか。もっと弱っているのかと思ってたわ、ハハハ~」

「カラ元気ですよ。さっそくなんですが、依頼人が来る前に二人で話しておきたいことがあるんだけど、もういいかな?疲れているならちょっと後にするけど」

「大丈夫やで。じゃあ、事務所に移ろうか」

自宅と並んで事務所が建てられていた。一旦玄関を出て、そちらへと移動した。
和田は友和の車椅子を押しながらバリアフリーになっていることに気付いた。

「こうなることを予想した訳やないやろうけど、自宅と事務所の間には段差がないな。入口も広くて車椅子が通行しやすいと感じたよ」

「ええ、お義兄さん。自分がこうなってつくづく良かったと思っています。将来車椅子の相談者が来ることも予測はしたんです。本当は自宅の中も段差が無いようにしたかったのですが、自分たちはいいだろうと思ってしなかったんですよ」

「今にして思えばやっておけばよかったというわけやな・・・そういうことって世の中には多いな。さて、友和君が話したかったことって何や?」

出されたお茶を手にして和田はそう尋ねた。
作品名:「月ヶ瀬」 第二話 作家名:てっしゅう