「月ヶ瀬」 第二話
平成16年3月10日、山崎静子は弁護士である夫、友和の依頼を受けて、新幹線で京都へと向かった。八条口からタクシーに乗って東寺を過ぎて静子の兄が住む自宅兼弁護士事務所に着いた。
「お兄さん!お久しぶり。静子です」
「おお、静子か。元気そうやな。まあ、座れ」
「これ、お土産。お義姉さまに渡して」
「悪いな。もうすぐこっちへ来るから一緒に話そう。今日は家へ泊ってゆくんやろ?」
「よろしいの?」
「あたりまえやないか。妻も喜ぶで。話したいことがあるやろさかいにな。それより、友和君の容態はどうなんや?」
「うん、あの事故で車いすになったけど、それ以外は元気よ。最近は何か一生懸命に調べているみたい。今日お願いする件に関係しているのかも知れないって思うけど」
「そうやったな。なら早速見せてもらおか」
静子の兄、和田保(たもつ)は静かに山崎友和からの引継ぎ依頼の手紙を読み始めた。
そこには依頼人の氏名、依頼内容、重大な事件にかかわる人物関係などが克明に書かれていた。
「静子はここに書かれていることを知ってんのか?」
「私は仮にも弁護士の妻ですよ。守秘義務を犯すような真似はしません」
「せやな、夫婦でも話せないことはあるからな。友和君に怪我をさせたのは村の誰かだと思われるけど、これから調べてゆく過程で出来れば犯人を見つけたいと思ってるねん」
「兄さん、あの村は村民全員が古いしきたりの与力制度に縛られていて、仲間外れにされることを極端に嫌っているから、口を割るとは考えられないと夫が言っていたわ」
「せやろな。ここにも書いてあるけど、ちょっと困難を極めるかも知れへんな。友和君には少し時間をくれと伝えておいて欲しいんやけど」
「ありがとう、兄さん。自分のペースで調べてくれていいのよ。依頼者へも担当の弁護士が和田保になると連絡してあるの。決して無理はしないでね、お願いよ。夫があんなことになったから余計に心配なの」
「十分注意するわ。奈良県警の担当刑事に調査をすることを伝えておく。村の駐在にも連絡が行くやろ。協力してくれはると思うので、今度はそれほど心配する必要がないと考えるね」
「お兄さん!お久しぶり。静子です」
「おお、静子か。元気そうやな。まあ、座れ」
「これ、お土産。お義姉さまに渡して」
「悪いな。もうすぐこっちへ来るから一緒に話そう。今日は家へ泊ってゆくんやろ?」
「よろしいの?」
「あたりまえやないか。妻も喜ぶで。話したいことがあるやろさかいにな。それより、友和君の容態はどうなんや?」
「うん、あの事故で車いすになったけど、それ以外は元気よ。最近は何か一生懸命に調べているみたい。今日お願いする件に関係しているのかも知れないって思うけど」
「そうやったな。なら早速見せてもらおか」
静子の兄、和田保(たもつ)は静かに山崎友和からの引継ぎ依頼の手紙を読み始めた。
そこには依頼人の氏名、依頼内容、重大な事件にかかわる人物関係などが克明に書かれていた。
「静子はここに書かれていることを知ってんのか?」
「私は仮にも弁護士の妻ですよ。守秘義務を犯すような真似はしません」
「せやな、夫婦でも話せないことはあるからな。友和君に怪我をさせたのは村の誰かだと思われるけど、これから調べてゆく過程で出来れば犯人を見つけたいと思ってるねん」
「兄さん、あの村は村民全員が古いしきたりの与力制度に縛られていて、仲間外れにされることを極端に嫌っているから、口を割るとは考えられないと夫が言っていたわ」
「せやろな。ここにも書いてあるけど、ちょっと困難を極めるかも知れへんな。友和君には少し時間をくれと伝えておいて欲しいんやけど」
「ありがとう、兄さん。自分のペースで調べてくれていいのよ。依頼者へも担当の弁護士が和田保になると連絡してあるの。決して無理はしないでね、お願いよ。夫があんなことになったから余計に心配なの」
「十分注意するわ。奈良県警の担当刑事に調査をすることを伝えておく。村の駐在にも連絡が行くやろ。協力してくれはると思うので、今度はそれほど心配する必要がないと考えるね」