遅くない、スタートライン 第5部 第2話
それから美裕の退院まで、幼稚舎の帰りにあきとを美裕の病室まで連れて行った。病室に行くたびに、あきとは美裕に言い聞かされたみたいで、それから俺の言うことを利くようになった。美裕が入院している間は、あきとはベッドで俺と一緒に寝た。時々…
「ママ…」と寝言を言った。コイツ…一緒に暮らし始めた時は、タオルの端を吸って寝てたんだ。それを美裕が時間をかけてタオルを吸うクセを治したんだ。俺と寝てる時に…そのクセが出てタオルケットの端を眠りながら吸っていた。俺はちょっと反省した…まだ5歳だ。ママ恋しくて当然!その日から俺もちょっと態度を柔らかくした。
私は時計を見た。午後3時10分!くるぞぉ!軽い足音が聞こえてきた。ドアがノックされた…
「だぁれ?」と聞いてやった。(*^^*)
「あきとぉ!ママぁ…はいっていい?」
「いいよぉ!めぐたんは起きてますが、静かにね」
「はぁい!」あきとはドアを開けて、横の洗面所で手を洗い消毒液を手につけた。
めぐたんは、生後独特の体重減少もあったが、いい健康状態だった。私も産後の経過も良く…明日退院予定だ。私はベッドから出て、あきとの横でめぐたんに授乳した。あきとはめぐたんの小さな手を触った。
「今日は誰と来たの?あきと1人で病室に入ってきたけど?」
「パパとぉ。でもねぇ…パパはあきやくんのパパとカフェにいったの」
「あぁ…そうなの。で…パパは病室の前まで送ってきたのね」
「うん。おしごとのはなしするから、さきにママのところいってて」
「そう。じゃあきとお兄ちゃん!ママのお手伝いしてくれる?そこのオムツ取ってきてくれる?」
「うん。わかった」あきとはソファから立ち上がった。
パパの努力の結果だな。本来のあきとに戻ったなと私は思った。
作品名:遅くない、スタートライン 第5部 第2話 作家名:楓 美風