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遅くない、スタートライン 第4部 第1話 11/2更新

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(9)

俺は頭が真っ白になった。自分には言い聞かせていたが、こうもパニくるとは思わなかった。入院手続きの書類も最初は手が震えて書けなかった。想定はしていたが、まさか車の中で陣痛が始まるとは思ってなかった。今日も健診を終えて美裕と家に帰れると思っていたから。

「MASATOパパ!大丈夫ですか?お水飲みますか」
看護師さんが俺に声をかけてくれたが、返事ができなかった。美裕は処置室に入ってからまだ出てこないし、福永助産師さんや真理子第2副院長先生の声も聞こえない。それが余計に不安だった…

後ろから肩を叩かれた。
「まだ初回陣痛でしょ?今からそんなんでどーすんだ?千尋さんに電話したのか?」
振り向いたら…雅樹兄貴だった。

俺は雅樹兄貴が買ってくれたミネラルウォーターを一気飲みした。一気飲みしてムセた。それで現実の世界に戻ってきた。
「び、ビックリしちゃって。まさか車の中で陣痛来るなんて思いもしなかった」
「そんなもんだよ。俺は舜樹の時は陣痛の時からそばにおれたけど、上のふたごの時は焦ったわ!急遽仕事が入ってさ、地下鉄やタクシーでは間に合わんと思った。圭吾がバイク飛ばして病院まで行ってくれてさ。そん時で6分だった。いくら事前にこうしよう!あぁしようと思ってもうまくいかないのがお産だ。ま!処置室から出てきたら、美裕ちゃんの腰一生懸命さすってやれ」雅樹兄貴は俺に紙袋を持たせて、歩いて行った。

ナースステーション横の処置室のドアが開いた。
「MASATOパパ!入ってぇ!」福永助産師さんの声が聞こえた。

美裕は痛みが引いたようで、起き上がってスポーツドリンクを飲んでいた。
「MASATOパパ!ちょうど特別室空いたから、美裕さんはこのまま入院してね!今はまだ陣痛の感覚が長いけどね」
真理子第2副院長先生は美裕のおなかをマッサージしながら…
「今はまだ10分間隔だから、本陣痛までまだあるから、その間にシャワーしてごはん食べてね!あぁMASATOさん!あなたはこのままナースステーションにいなさい。千尋さんには連絡した?」
「あ、まだです。連絡してきます」」看護師さんが電話を指さした。
「ここでどうぞ!」俺は電話を借りて千尋さんに連絡した。

美裕は看護師さんと福永助産師に付き添われて、特別室に入った。美裕は普通の個室でいいと言ったが、高茂久院長先生が手配してくれた。俺も美裕も一般人じゃないからな!

千尋さんに連絡をしたら…
「あぁやっぱりぃ。車乗る前にちょっとおなかが痛いって言ってたの。入院グッズ持たせてよかった。あっくんの事は任せて!美裕に頑張れって言って!MASATOパパも頑張れ!後で差し入れに行くから」と言った。

美裕…陣痛の前兆があったんだな。俺は美裕のバックから母子手帳ケースと真理子第2副院長先生がくれた【出産の心構え】の本を開いて読み始めた。俺が焦っても何もできるわけじゃないから。

その頃…あっくんは幼稚舎のバスを降りて、迎えに来た雄介おじちゃんに聞いたそうだ。
「ママ…まだいるぅ?」って。雄介義兄さんは千尋さんに言われてたみたいで…
「あっくん!よぉく聞いてくれる?」
あっくんはうんうんうなづいて、手を挙げた。【はい】だな!
「ママ…今日は病院に行ったんだけど、そのまま病院に泊まるんだって。モアちゃんが産まれるんだよ。だから、今日は雄介おじちゃんと千尋おばちゃんと有ちゃんでお留守番しような。産まれたらすぐに病院に連れて行ってあげるからね」と…
「はぁい」返事はしたものの、あっくんの顔はちょっと寂しそうだった。美裕も俺もいないから!

お産ってホントわからん。雅樹兄貴が言った通りだ ( 一一)  
病院に着いたのは午後4時過ぎだ。午後4時半の妊婦健診を予約していた美裕だ。特別室に入ったが、午後6時前か?その段階でまだ陣痛感覚が10分だった。

合間にシャワーを浴びて、千尋さんが作ってくれたおにぎりを食べた美裕だ。腰と背中が痛むみたいで、俺は美裕の腰と背中をさすった。陣痛の合間に俺にもおにぎりを食べろと真理子第2副院長先生が言った。真理子第2副院長先生が部屋に来て、美裕の診察をしている間に俺も水分補給し、おにぎりを食べた。この時で午後8時50分だったかな?
俺は美裕に言われて、陣痛の間隔をメモしていた。

「MASATOパパ!私がいるからさ。ちょっと外の空気吸っておいで!」と真理子第2副院長先生が言った。福永助産師さんも俺にうなづいた。

「すみません!ちょっと行ってきます。美裕ぉ!出産したら何が食べたいんだ?」
美裕…書くなよ!それも画用紙に!美裕が指さした画用紙を福永助産師さんが俺に見せた。
「スィーツオンパレードだな!真理子第2副院長先生・福永助産師さんの分も買ってきますね」
「おぅ!」真理子第2副院長先生が手を挙げた、

近くのコンビニに行ったら、美裕の一番好きなスィーツが売り切れていた。これがなきゃほっぺた膨らむからな!俺は商店街のコンビニまで足をのばした。その間10分ほどだ!次のコンビニで美裕の一番好きなスィーツがあって、他の物も買ってコンビニを出た。俺が病院を出てからトータル30分ぐらいかな?俺はコンビニの袋を両手に提げて夜間出口から入った。

その時だ…スマホが鳴った。

病室の前まで来た時だ。美裕の痛がる声が廊下まで響いた!俺の到着を待っていた看護師さんが手に持っていたコンビニの袋を持ってくれた。
「冷蔵庫入れときますね!MASATOパパ!早く病室入って!」
俺の背中を押した看護師さんだった。

真理子第2副院長先生が俺の顔を見てこう言った。
「アンタがいなくなってから、急に陣痛の間隔が短くなった。今からLDRに行こう。もう頭見えてるから」
「それまでモアちゃん、大人しくしてたのにね。さ、美裕さん!MASATOさん帰ってきたわよ。行くわよ」
美裕は陣痛の痛さで、枕の端を握りしめていた。その手は真っ赤だった…

「ごめんごめん!美裕の一番好きなスィーツが売り切れて、商店街の中まで行ってたんだ。俺帰ってきたから、一緒に頑張ろう!な!」俺の声に美裕は目を開けた。
「う…ん」俺の手を握り返した。

それから…数時間後!
「フフッ…かわええ。美裕さんにそっくりぃ」福永助産師さんが口に手を当てて笑った。真理子第2副院長先生も口に手を当てて笑った。
「顔…美裕さんでボディはMASATOパパだな。チビのはずだったのにラストスパートかけたか?MASATOパパ!」

俺の腕の中にいる…モアちゃんこと娘の顔を見つめていたから。美裕も手を伸ばし、モアちゃんの手を触った。
「ですかね?俺も美裕に似ておチビだと思ったから」
「この2週間ぐらいでまたおなかが…重くなったなとは思っていたの」
福永助産師さんが俺の腕から、モアちゃんを抱きとった。
「そんなものよ。さ、美裕さん…処置終わったからお部屋に帰ろう。MASATOパパは連絡!はい」
「そうだそうだ!連絡せんと!もう起きてるかな?千尋さん達」
「うん。きっと起きてるわよ…電話してあげて。あっくんにも」
「はい!じゃ俺連絡してくるね」美裕の手を軽く握った。