遅くない、スタートライン 第4部 第1話 11/2更新
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5月1日…晴天なり。引越日和だ!あっくんとリビングのカーテンレールにてるてる坊主をかけた。お引越しの日が良い天気でありますようにと。あっくんはてるてる坊主を3個作った。俺と美裕と自分の分をさ!
「晴れたねぇ!」あっくんは嬉しそうに5月の青空を見て言った。
「うん。いいお天気だね!さ…朝ごはん食べちゃおう」
「うん。ママぁ!!」あっくんはキッチンにいる美裕に声をかけた。
この家での最後の食事になる。昨日…夜寝る前に俺がコンビニ行ってサンドイッチやおにぎりを仕入れてきた。こむぎとむぎたもテーブルの横で一緒に食べた。この家に住んでもう1年半いやまだ…1年半だ。俺は美裕さんにプロポーズするためにこの家を買ったようなものだ。美裕は思い出したのか…時々口に手を当てて笑いながら食べていた。
「ママぁ!何笑ってるん?」俺は軽く美裕を睨んでやった。
「だってぇ…思い出したんだもん。思い出さないはずないよね?パパ」
ウッ( ;´Д`) 畳みかけるか?俺を!あっくんは俺達のやりとりを見てたが、5歳児にはわからんでしょ。わかったらスゴイわ。
「いいでしょ…新居で尋問しますさかい。アンタ…この頃態度デカイわ。出産前にシメとくわ」
「ふぅん!いいよぉ…あっくん!今のパパの言葉…そのまま千尋おばちゃんに言ってね」
あっくんは…俺の顔を見た。【どーしたらいいの?】だ。
「……すみません。美裕さん」謝っとこう。後で千尋さんに怒られるのもな!
引越と言ってもほぼ荷物ないわ!生活用品は俺が車で運んだ。書籍類もさ!昨日…美裕と家の掃除もしたし、高茂久院長先生が、この家で使ってた家具や家電を使いたいって言ったから、ホント楽な引越だよ。後は鍵を高茂久不動産部に預けるだけだ。俺達はリュックを背負って家の前に立った。こむぎとむぎたも!
「ありがとうございました」俺達は声をそろえて挨拶し、頭を下げた。こむぎとむぎたもしっぽを振った。
「さて、行きましょうか」
「うん。パパ」美裕とあっくんが返事をした。
家から南に坂を下り、歩くこと10分!じゃーん♪
坂を下り、左手のカーブを曲がれば我が家だ。おぉ…引っ越しのトラックが停まってる。千尋さんと雄介義兄さんが俺達を見て手を振った。
「本日からよろしくお願いします」
両家…樹家・福田家の家族で頭を下げた。今日から新しい暮らしが始まる俺達だ。
千尋さん達は、この引越を機に旧マンションで使ってた物を大分処分したらしい。今はウォークインクローゼットがあるし、収納もあるからね。家電も家具も新しく買った。千尋さん達は2トントラック1台で引越てきた。
「楽だったわ(*^^*)」
「荷物少ないといいね。事前に運んだのも良かったね」2人で嬉しそうに笑った。
「でしょ。福田家はほら!」美裕が言うと、3人で背を向けてリュックサックを見せて、こむぎとむぎたも後ろを向かせた。こむぎとむぎたもミニリュックを背負っていた。中身はトイレ用品とおやつのガムとクッキー1枚だけど。
「かっわいい!姫子見せなさい」姫子は後ろを向いたら、リュックサックを背負ってた。これは美裕が手作りした。だからこむぎとむぎたもオソロと言うわけでね。またこれが、引越のドライバーに受けて大笑いされた。
家に入り各自片付けをした。あっくんの部屋もあるんだ!俺達の寝室横に簡易テーブルとチェアーと、あっくんの好きなアニメキャラのラグマットにベッドカバーも同じキャラで統一した。喜んでくれたよ!
「パパとママはリビングでお片付けしてるから、頑張ってね。あっくん兄ちゃん」
「時計の針が11のとこにきたら、下りてきてね。お昼ごはんにしよう」
「はーい!」あっくんは梱包を解いた段ボールの中を探り始めた。
こむぎとむぎたは、サンルーフ下に犬小屋を置いた。家の中でもケージも用意しているが、犬小屋もあってもいいかなと思って、姫子とオソロのログハウス風の犬小屋にした。コイツらは産まれた時から一緒だから、大きいサイズを買って、中には美裕が縫ったマットを引いて、お気に入りのくまちゃんのぬいぐるみを入れてやった。もぉ…2匹は大喜びで出たり入ったりした。また中庭を挟んで樹家なので、姫子もこむぎ達が見える場所に犬小屋を置いてもらった。姫子も自分の犬小屋探検に精を出していた。(*^^*)
美裕は座ったり立ったりして、適度に片づけをした。くまのアップリケをつけたエプロンをしているが、もぉ(*^^*)後ろのボタンはできない。おなかがだけが突き出てる美裕だからさ。
「美裕ぉ!もうソファ座ってろよ。後は俺がするから」
「うん。これだけね!」美裕はカラトリーをキッチンの引き出しにしまった。
一気に片づけたいところだが、出産間近の妊婦妻に5歳児と柴犬2匹がいる。適度に時間区切らなきゃさ。千尋さんと美裕がキッチンで【引越そば】を作っていた。また昼からは健太郎義兄さんと舞子さんが手伝いに来てくれるから、2人の分も残しておいた。
「新しい家っていいね。畳の匂いに壁も真っ白!」千尋さんはご機嫌だ。
「ホント…たっぷり収納があるから家具もなくスッキリ!」雄介義兄さんが言った。
「ホント…福永雅樹一級建築士の頭はスゴイわ」
「だよね!あぁ…出産したら楽しみぃ。色々したい事があるわ」美裕が言った。
「だよね!ママぁ…メモにカキカキしてた」あっくんが言う(*^^*)
「ほぉ…それ後で見せてね。美裕さん」俺は朝の仕返しのつもりで言ってやった。
「い・や・よ」美裕は顔を横に向けた。
「もぉ…いい加減にしなさい。アンタたち」最後には千尋さんが怒って終わりだ。(*^^*)
犬3匹も腹が減ったコールをしていた。窓のところまで来て3匹でしっぽ振るんだから。
「はいはい!あっくんがあげるよ」
あっくんはフードが入ったコンテナボックスを開けた。
「あっくん!またお兄ちゃんになったな!」
「お兄ちゃんエンジンがかかってるもんね。産まれたらヒートアップするんじゃない?」
「かもぉ(*^^*)あっくん…お世話好きだから。ね!パパ」
「俺と一緒だよ!」その声に千尋さん達が笑った。
夜は夜で、寿司を取りケータリングも取った。樹家・福田家の引越祝いだ。健太郎義兄さん達から観葉植物と冷酒の差し入れに、夕方には福永雅樹一級建築士が来てお祝いの花束とバスケットに入ったフルーツの詰め合わせを頂いた。またそれから、届く届く!竜生兄貴・圭吾兄貴や准達からも花束が届いた。おかげで樹家も福田家のリビングは花束で一杯だよ!
あっくんはもう…ソファでいびきかいて寝てた。尚君達と芝生の庭を走り回り、一杯食べて一杯飲んでさ。また柴犬姉弟達も一緒になって遊んでたから。コイツらもケージの前で行き倒れていた。(笑)
「あっくんはいつもの事だけど、こむぎとむぎたもねぇ」
美裕はおなかに手を当てながら言った。
「こむぎとむぎたも結構お調子犬だな」
「ップップ…お調子犬って。あぁ…イケるわ。それもらった」
美裕はくまのノートに早速書き込んだ。
「あんさん…出産間近でようノートに書きこんでるね。それいつ書くの?」
「育児の合間に…なんてね!書けるかどうかわかりませんが、保存しとくの」
俺はおなかに手を当てて、
作品名:遅くない、スタートライン 第4部 第1話 11/2更新 作家名:楓 美風