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レアなライブ

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 後半に、とてもいい歌があった。その曲は、未来に希望を抱かせてくれる系のもので、俺好みの系統である。だが、光線の動きに目を奪われ、思うように集中できなかった。こともあろうに、家でやっていたアホくさい解析(コップ)の影響のせいか、光線や、それが描く幾何学的な模様(飾りのLEDパネルの発光が描く図形、あとは光線が場内の壁を照らしたときの図形、など)を、数学的に解析しようとしていた。そうしている間に、曲は終わった。
 てかコップ何なんだマジで。何で今日その発想が出たんだオイ。音楽を全然聴けなかったってわけじゃないけど、コップ解析、何もいい影響なかった。いらな過ぎる……。(今思い出した。突然音の周波数について考え始めたりしていたことを。いったい俺は……ま、過ぎたことだしいいか…)。

 そして、最後の曲が来た。もうアンコールは済んでいたので、本当に最後の曲だ。
 それは、またも未来に希望を抱かせる系の曲で、それはちゃんと聴けた。さすがに。コップは消えていた。今思うと本当に良かった。
 だがもう一つ、ほとんど消えていたものがあった。
 ボーカルの姿である。
 前に座っていた観客が、最後の最後に立ち上がったのである(よこの人は座ってた。何で前……↓↓↓)

 歌声はちゃんと聞こえていたのだが、最後くらい、姿見たいなと思っていた。

 だが、なんか良かった。

 姿は見えなかったが、最後の最後で未来に希望を抱けたからである。そのときボーカルの人がどんな動きをしていたか知る由もないし、その歌声も、当分の間は直に聴くこともないだろう。
 しかし、そのとき抱いた感情は、こうやって残っている。それは、光でも音でもない、影も形も捉えられないものだが、強い記憶としてちゃんとある。
 最後に立った前の観客は黒いシャツを着ていたが、俺は当分の間それを忘れないだろう。
 その黒の向こうで、確かにボーカルの人が歌っていて、それによって希望を抱けたから。その黒に関係なく、光が、希望を抱かせる手助けをしていたから。

 だから、その曲の最後に、ボーカルの人の姿が目に入ったときは、すごく嬉しかった。

作品名:レアなライブ 作家名:島尾