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レアなライブ

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今日は、以前から楽しみにしていたライブの日だった。最近気怠い感覚があったのだがそれも薄れ、興奮していた。
 俺はよく遅刻するのだが、まかり間違ってもそんなことになるわけにはいかない。
その気持ちをツイッターで呟いて、「決して遅れない。」という意志を全世界に示した(裏垢で)。

 当然遅刻した。全世界にフラグを立てたのだから。
 なぜ遅刻したかというと、全くどうでもいいことをしていたからだ。具体的には、「コップに入った水を飲む」という行為を、数学的に解析していたのだ。明らかに今日すべきことではないし、明日以降もする必要はないことだ。けどなんか知らないけど、やり始めたら引き込まれて、しかも思いのほか面倒くさいし、さらには、めんどくさいことが思いついたりして、気づいたら時間が経っていて、遅刻した。

 でも頑張ったので、5分くらいの遅刻で済んだ。ただ、超高速で歩いたので疲れた。

 
 ホールに着くと、スタッフの人が場内まで案内してくれた。
 その途中。つまり場内に入る前に、歌が始まった。

 いい歌だった。まあツアーだし、事前に楽曲は聴いてるから、そういう感情を抱くことはあり得るだろう。

 場内に入ると、音が突然大きく感じられ、胸が音によって振動した。
 ほとんどの観客は立っていたが、疲れたし、座りたかったし、俺の横の人と俺の前の人は座ってたし、めっちゃ後ろの席だったから、座った。

 そのときの光景は、なんとなく良かった。
 まるで生い茂る森のような観客の奥に、アーティストが小さく、しかしはっきりと窺えたし、歌声や伴奏は耳をふさいでも十分聞こえるくらいに大きかった。ライブではアーティストを直に見ることに重きを置いているから、姿かたちや音の大きさは関係なく、単に見えたらいいのだ。舞台の飾りのライト、観客のペンライト、それらがとても鮮やかで、アーティストを引き立たせていた。

 しかし、前の前の列の観客は皆総立ち、そのまた前も総立ち、おまけにほとんどの観客はペンライトを持っているから、ボーカルの人が隠れることも少なくなかった。しかし絶対目に入れてやろうと、にょきにょきと上半身を動かしていた(常にではないのでキモくはないと信じたい)…。

 ライブでは、音楽に集中しようと思ってもなかなかそうはいかない。実際に目の前で、iTunesで聴いた歌をうたっている本人がいるというのに。

 それは、周りに人が多くいるからだろう。赤の他人とは言え、やはり多少は気になるから、音楽に対して没頭できないのだと思う。だから、アーティストを見ることに主眼を置いているのだ。

 と書きながら、なぜか立つ気になれなかった。なんとなく。
 時間が経てば経つほど、立つ気がなくなった。
 
 しかし、どこか良かった。
 明らかにそこに存在していて、目に映ったり消えたりしているが、音はずっと聞こえていた。確実に。
 そこに、目で見るのとは違った感覚があった。そのとき、アーティストの存在を確認する方法が、見ることだけではなかったのだ。聞くことが、その方法に加わっていた。実際に、敢えて天井を見たり、様々な方向に様々な変化をする光線を追ったり、極めて多様な色彩に惹かれたり、まさかの、目の焦点を意図的にずらすという行為までしていた(って何してんの俺……)。
 今気づいたが、双眼鏡持っていったんだった。マジでいらねー。重いだけだった。もう持って行かない(フラグ?)。
 あと、ペンライトも持って行ってた。……次のライブでは使おう。

作品名:レアなライブ 作家名:島尾