「かぐや姫」 第四話
本人も気にしているだろうから、聞くことはやめた。
それより気になったのはカプセルを開けたときに発せられたメッセージの内容だ。
二十年経ったら迎えに来るという根拠は何なんだろう?ということと、どうしてかぐやの住まいをこの広い地球上で見つけ出すのかとの疑問だ。
ひょっとしてあの傷の下に何らかの発信機が埋め込まれているのかもしれない。
しかし、それならレントゲンを撮影した時に発見できただろう。
地球上の科学では解明できない、レントゲンやCTには写らない小型のものが埋め込まれているとしたら・・・
二十年のタイマーが作動して突然かぐやは惑星かぐやの人間に変化する装置だとしたら、いやそんなことは不可能だろう。何か解らないが、かぐやを必要とする者が発見しやすいように目印にしているのだろうか。
地球人に化けてすでに潜入しているのかも知れない。
だとしたらこの日本に、そして名古屋に、ひょっとしてこの近所にそういう変装した人物が隠れているのかも知れないとまで不安が膨らむ。
今夜は眠れなくなった。
美加が心配して傍に来る。
「どうしたの?かぐやのこと考えて眠れないの」
「うん、そうなんだよ。美加があのときに言った言葉がボクにも同じだと感じられてきた」
「愛情が生まれて手放せないよ、と言ったことね?」
「そう。かぐやを手放すなんて出来ない。二十歳になる前にどこかへ隠そうとまで考えるよ」
「大げさなのね。私たちがしっかりとしていれば、かぐやが勝手に連れて行かれるなんていうことは起こらないよ。そんな先の心配をしてないで寝ましょう。かぐやが心配するわよ」
「わかっているよ。それにしてもかぐやの首の傷が気になる・・・」
「そうね、普通は小さい時の傷なんて大きくなると消えたり、見えにくくなったりするけど、かぐやの傷は身体の大きさに合わせて成長しているようにも見えるから不安ね」
かぐやに埋め込まれたバイオメモリーは、それ自身も成長しているから傷が大きくなっているように見えるのだ。CTスキャンしても何も映らなかったのは、何かが埋め込まれているのではなく、傷に見える部分がメモリー細胞になっていて、外からは傷としてその存在を発見されないようにカモフラージュされているということだった。
作品名:「かぐや姫」 第四話 作家名:てっしゅう