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こーぎープリッド
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ナルの夏休み エピソード0-0

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女学院の南先生から音楽学校とダンススクールを紹介されて





 今日も私が通う中学校は休校。その代わり、夏休みはその日数分減らされる。今はムラ社会のように、市内の人たちの情報が瞬時にわかる。昨夜、午後8時頃、これから弟と一緒に部屋に入るとき、アイドル育成の関東女学院から連絡が入った。

 今日は休校になって3日目、今日と明日、関東女学院の南先生と一緒に音楽学校とダンススクールを見学し、もし良かったら入学の手続きをする。
「このあいだの転入試験のとき、ごめんなさい。うちの学院の方針なの。わざとみんなと違う子を入れないと、みんなの結束と忍耐力が育たないから。それに寛容さも」
 私は、まだ中学1年生で12歳、南先生の言っていることがよく理解できない。
「でも、みんな熱意ある人たちが集まればいいのではないでしょうか」
「そうなると個性がなくなる。アイドル育成は軍人を育てる場所ではないの。みんな同じような顔のアイドルでは、つまらないでしょう。あえて、今回の場合、本気ではない子、やるきなさそうな子を入れたの。ほんとう、不愉快なおもいをさせてごめんね」
「いいです。良くわからないけど、南さんが、私にそこまで気を遣って」
「でも、公立中学校でも良い子が多すぎるじゃないの。あえて高校を出たら、中東やアフリカに永住して、そこに暮らす人たちのために、一生涯ボランティアにいくことを選択するのよ。あそこに行くのはサイコパスという罪悪感を感じない人たちが行くところ。とても性格が悪い人に、他の宗教を一切認めないガチガチな戒律主義者ばかり。食糧不足に水不足、広がる砂漠化でどうにもならないのに」
「私、怖いの。この社会が。でも、みんなを励ますのも仕事だと思うの。でも、南さんは教師として立派だと思います」


 私はスマートフォンから南先生の個人情報が自動的に入力される。
『血液型A型+ 身長167センチ 体重42キロ 年齢42歳と10ヶ月 年収・・・住所・・・』
「南さんは42歳にみえない。まだ22歳に見える。今流行りのホログラムで化けていないし。ホログラムで変装しても、街中にある監視カメラで本当の顔がわかる。それに、個人情報が誰でも自由に調べられる」
「そうね。情報がありすぎて、みんな頭の中にいちいち覚えていられない。誰の過去も本人の承諾なしで知ることができる。誰が何を買ったものとか収入がどのくらいなのかわかる。だからいちいち頭に入れるのがめんどうだから、覚えないの」
「そうよね。私たち子供は、みんなのことは、ある程度を覚えられるけど、大人になると頭の中がパンクするわね」


 私たちは一緒にレストランで食事をした。南先生のロボットカーが自動的に、音楽学校とダンススクールに移動させてくれる。
「南さんは、若いし、でもちょっと子供っぽい顔している。えーと」
「ああ・・彼氏がいるか、ということでしょう」
「何で、これから質問することがわかるの」
「直感よ」
「で、仕事が忙しいからですか」
「そうね・・・、今の仕事はとても楽しい。つい本気出すから気がつけば夜中になることがある。いつも『残業ばかりして』と叱られるのよ」
「南さん、なんで」
「そうね・・・ロボットのことでしょう。なるべく機械に頼りたくないの。自分の力で、どこまでがんばれるか試してみたいの。でも、教師の仕事も面白いし、やりがいがあるわ」
「そうですか。でも南さんは頭の回転がとても早い。そんな大人に憧れます」
「今日は年休扱いにしてもらっているの。有給休暇なの。だって年間40日とる義務があるから日本でも、夏にはまとめて取って子供たちと一緒に、バカンスを過ごす家族が多いのよ」
「そうですか」

 私たちの前に料理が来た。
「ねえ、これば私のおごりだから遠慮しないで」
「ありがとうございます。いただきます」
「彼氏の話だけど、何人かつきあったことがあるわ。でも、どうしても仕事のほうが優先になって。で、多少、できが悪い能力がなくてもいいから私のことを理解してくれる人がいればいいけど、みんな警視庁やその下部組織、警備会社、人材管理会社、資産監視会社などで一生懸命、働いているのよ。それに家事はロボットやアンドロイドがやってくれるし」
「主夫というのを、やってくれる男性がなかなかいないということですね」
「そうなの。私の悩みは、子供を産んで育てたいけど、もう歳だから、そのことで、とても悩んでいるの」
「そうですか。きっと、どこかに南さんにふさわしい人がいますよ」
「ありがとう。で、何か他に欲しいものは」
「だ、大丈夫です」
「ねえ遠慮しないで」
「では、アイスパフェを」
「私も」


 午後、私たちはダンススクールを見学した。先生の話を聞き、私のことを喜んで受け入れた。
「それでは入学の手続きを」
「いいですか。あとは音楽学校」
「はい」

 同じように音楽学校も見学して、入学の手続きをした。

 明日は金曜日、どうせなら一週間、休みにすることにした。そのかわり夏休みが5日も短縮する。あの富士宮先生の失言で、中学校は大問題になった。

 来週から忙しくなる。放課後にはクラブ活動のほか、空いている時間に学習塾に音楽学校とダンススクールに通う。



「みなさん。私の失言で、ご迷惑かけて申し訳ないです。今後、十分、授業の内容を気をつけます」
「先生、なんで丸坊主頭なの」
 私は大きな声で、富士宮先生に質問した。
「それは、教師は生徒を決して傷つけてはいけない規則があります。でも、みんな、とても良い子に育ちました。将来、とても厳しい環境の地球の裏側に永住して、地元の人たちのために一生を捧げる子が何人かいます。私は精神病質の疑いがある子たちと一緒にキャンプに参加します。更生のみこみがないのか、それを調べるために夏休みカムチャッカ半島で石器時代サバイバルキャンプに参加します」
「先生、そこまで責任を取らないで」
 他の女子生徒もいった。
「先生、とてもつらいキャンプだわ。やめて、耐えられないわ」
「でも、そうしないと、私の気がすまない」


 月曜日の朝、公立中学校の体育館で、地理の富士宮先生の謝罪が行われた。


 私は、あの幸福物質を飲んで、臨死体験をしたらしい。強烈な幸福感で、生きたまま魂が身体から離れたらしい。というのは、月曜日のことは全然、覚えていない。火曜日は臨時休校なので、水着を着たままのんびりした。

 その後、幸福物質の後遺症、重度の統合失調症とか、躁うつ病にならないため、ちゃんと5日間、精神を正常にする薬を飲むように指導された。そうしないと、気分障害が周期的に起きる。ひどく気が落ち込んだり、とてもハイになって全く眠れなくなる。全然、眠れないから体力を消耗する。自分で自分が制御できなくなる。前頭葉に障害も起きる、怒りっぽくなる。最悪、人格が変わる。

 月に2度、私は精神科の診療所で精密検査を受ける義務がある。

 2時限後から普通通りの授業が始まる。富士宮先生の地理の授業。
「先生、私、地球の裏側に悲惨な生活を送っている人たちがいるけど、その人たちのために一生を捧げます」
「でも、まだ12歳でしょう。よく考えて」