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てっしゅう
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novelistID. 29231
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「かぐや姫」 第二話

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「そうね、やれるだけのことはやったわ。援軍が到着したとき、発見できるようにした?」

「もちろんだ。身体に埋め込んだバイオメモリーは二十年後に情報を脳へ運ぶようにしてある。それまでは地球人と全く変わらない育ち方をするので、奴らには発見されないだろう」

奴らと言ったのは自分たちを襲った敵の事である。
今回の戦闘で味方の宇宙船は自分の乗る一艘だけで、敵もほとんどが破壊され、惑星へ逃げかえった。大破しているこの船では3光年は飛べない。敵もそのことを知っているから見捨てたのだろう。

惑星かぐやでは生まれた生き物すべてに識別番号がプリントされる。
高度な文明下では女性は一人では出産できない。自然分娩もしない。
必ず医療機関か政府の指定機関で出産する。その時に自動的に埋め込まれるのだ。
だから、宇宙船内で生まれた、かぐやはその処置が行われていなかった。
そもそも、敵はかぐやの存在も知らない。

危険な自然分娩を試みた結果が功を奏した。
母親はその時の無理がたたって起きられなくなってしまった。

「残された時間は少ない。お腹が大きかったお前を連れてきたことに後悔はないが、子供を育てられないことを思うと不憫だ。許してくれ」

「私は惑星かぐやの王妃よ。あなたの妻として、娘の成長を見守ってやれないことは心残りだけど、ここまで戦ってきて最後の最後で望みが繋げたことは喜ばないといけない。勇気を出してここで産んだことは私たちの未来に・・・勝利よ」

「長い戦いはここで終わったが、奴らにとって二十年後は仰天の反撃に驚くだろう。潜伏している我らの同志たちも態勢を立て直して、娘の元に集まってくれることを祈って静かに眠ろう」

そう言うと、宇宙船は地球をゆっくりと離れて行く。
メインエンジンは使えないのでわずかな補助エンジンを全開にして、月面着陸を試みた。
空気清浄器の破壊によって非常用酸素カプセルも今くわえている分が最後になっていた。

「地球という星はここから見るととても美しく見える。娘が安全に成長することを祈ろう」

「そうね、とっても美しい星だわ。我々の惑星かぐやにも劣らないわね」

「〇△※☆×◇~」

それは彼らの祈りの言葉だった。
地球にいる赤ちゃんかぐやは、まさに日本民話の現代版かぐや姫になろうとしていた。