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てっしゅう
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novelistID. 29231
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「空蝉の恋」 最終回

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「よく解っているじゃないの。私なんか今の佳恵の言葉通りに失敗した人がたくさんいたわ。今の夫は前の奥さんが浮気して離婚したから、私の思いを理解してくれるの。そういう部分でも巡り合わせだったのね。年下の男性も佳恵とのことを心から愛してくれるのだったら、それが巡り合わせなのよ。体のつながりがそのことを証明してくれるかもしれないわよ」

身体のつながりが気持ちを証明してくれるかもしれない、と有里に言われたことは、私の何かを動かした。
これまで避けてばかりいた自分を変えることで真実が見えるとしたら、彼の胸に飛び込める自分に変わることが出来ると思うようになった。

有里との再会は自分の大きな転機となった。
私は優華ともう一度話して気持ちを決めたいと考えた。
言葉を選んで斎藤さんとのお付き合いを許して欲しいと話した。優華は感激したのか私の手を握って、「これからはお母さんになるのね」と言ってくれた。

まだ母親が亡くなって一年少ししか経っていないことを申し訳ないと感じていたので、この言葉は正直嬉しかった。
娘から見て父親が他の女性と再婚するということがどういう気持ちなのか測りかねたが、優華は自分が過去にこだわることで父親が悲しい思いをするだろうことを十分に理解していた。

言い終えて優華を強く抱きしめた。
彼女の身体の温もりを、彼女の心の温もりを、彼女の父親に対する愛情を、肌で感じられた私は決心をした。
きっと最後の仕上げは斎藤さんのすべてを受け入れたときに終わるだろう。
男の人を心から好きになったことは無かったけど、もし斎藤さんに強く抱きしめられたら、その瞬間生まれて初めて抱かれたいという思いになってゆくと信じられた。

人生の半分を通り過ぎた年齢で、私は男と女の強い結びつきを得ることになった。
それは愛される喜びであり、愛する喜びであり、家族の絆の強さであり、忘れていた女の歓びでもあった。
まるで前の夫とは違う別の生き物が自分の中に入ってくるという感覚に、恥ずかしいほど声を上げ、びしょ濡れになる自分がいた。

徳永や和仁への思いは消え去り、この再婚で恵美子との付き合いも少なくなってしまった。別れた夫へは再婚したことを直接伝えた。そして、洋子への養育費や自宅の負担も停止してもらった。斎藤には亡くなった妻の墓と位牌を守ってゆく義務があった。
それは私にも背負わされることであったが、亡き奥様への感謝の日々を過ごすことで、優華も洋子も家族になれると信じられた。

終わり。