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こんな所に。。。

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「はー♡」

 1冊読み終えた和香さんは、満足の溜息を漏らしました。

 本を仕舞おうと、ベンチの右側のバッグに手を伸ばします。

 その時初めて和香さんは、空いていた隣に 誰かが座っている事に気が付きました。

「…ん? 何で、こんな所にいるの!?」

 驚きの声に、本から顔を上げた正也君が応えます。

「多分…和香と同じ理由。」

 自分が、公園でデートの待ち合わせしていた事を思い出した和香さん。

 バッグのポケットから、懐中時計を探り出します。

「─ もう、40分も過ぎてるじゃない!」

「約束の時間の5分前には、僕は ここに座ってたけどね。」

「え…?」

「本に没頭してた和香には、気が付いて貰えなかったけど」

 和香さんは、正也君の二の腕に手を伸ばして、軽く揺すりました。

「声、掛けてくれれば 良かったのにぃ」

「読書を中断させると、不機嫌になるでしょ? 和香は!」

「そ、そうかなぁ…」

「前回そうしたら…1日中不機嫌だったし」

 首だけ曲げた正也君が、和香さんを軽く睨みます。

「隣に座れば、流石に気配に気が付いて 読書を中断してくれるかと思ったんだけど…10分経っても そんな気配が微塵もなかったので……諦めて僕も本を読み始めた」

「ご、ごめん。。。」

作品名:こんな所に。。。 作家名:紀之介