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てっしゅう
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「空蝉の恋」 第三十六話

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久しぶりに徳永からラインが届いた。
夫の離婚でしばらくは会えないと伝えていたので、遠慮していたのだろう。

「そろそろ会えないかな?」

そう書かれていた。
徳永には男性としての逞しさとか力強さに対する思いが強い。自分が大切にしてもらえるだろうことは何となく期待できる。
会えば情に駆られていくところまで行ってしまう。
引き返せないことにならないように今は会わないことを決めた。

斎藤のことが好きになったからではない。
和仁や徳永のことを少しでも好きになった自分が本心からなのか、夫への不満から来ていたストレスへの解消だけだったのか、決めかねていたからだ。
もちろん会えば解るだろう。しかし、会うということは抱かれるということを相手に承知させることになる。

一度だけ約束通り抱かれて、さようならをするということなど女には出来ない。
私は嘘をつくのがもう嫌だったので、正直な気持ちを徳永のラインへ返した。

時は少し流れた。
仕事は順調に覚えることが出来て、一人で任せられる時間も与えられた。
ショップにやってくる常連のお客さんとも親しく会話も弾む。自分が通っていた大学の生徒もやってくる。
そんな中で高校大学と同級生だった友達の娘さんが母親と一緒にやって来た。

「いらっしゃいませ~」

「お久しぶりね、佳恵」

「ええ?有里ちゃん?」

「そうよ。娘からあなたが働いているって聞いて一緒に来たの」

「そうだったの。椙山の近くのお店だから、そのうち誰かと会えるんじゃないかとは思っていたけど、嬉しいわ。元気にしている?」

「まあね。それにしてもあなた若いわねえ~まだ独身だった?」

「違うわよ。二十歳の娘が一人いるの」

「じゃあうちの娘と同じね。椙山に通っているの?」

「違うの。高校も公立だったし」

「ねえ、お話ししたいわね。何時に終わるの?」

「今日は早番だから五時かな」

「少し時間いい?その頃に来るから。ご主人のごはんとか大丈夫かしら?」

「主人は居ないからいいのよ、気にしてくれなくても」

「ええ?出張か転勤されているの?」

「ううん、バツイチ」

「ほんとう?あなたみたいなまじめでおとなしい印象のお嬢さんが・・・世の中分からないわね。じゃあ、詳しくは後で聞くわ」