見覚えのある(双子と三つ子)
「…今のが、三つ子の次女さん?」
廊下を遠ざかる女子の姿を見送りながら、僕は尋ねた。
「そう」
肯定する洋介。
僕は、素直に感心してみせた。
「…良く、三つ子の見分けが付くもんだ」
「3人の見分けは…付かない」
「え? でもさっき、2人の区別 付けてたよね?」
「3人のうち、さぁーじゃない人は、奈美さんか多美さんだからね。」
歩き始めた洋介にツラれて、僕も歩きだす。
「─ もしかして、佐美さんと それ以外で、見分けてるって事?」
「さぁーは、見ただけで、9割方判るんだけど…」
洋介は、窓の外を見た。
「他の2人は、さぁーじゃないって事しか、判らないんだよねぇ」
「さ、佐美さん以外は、消去法で認識してるんだ…」
「所作を見て、奈美さんか多美さんか判断してる。」
「…」
「さぁーを見分けるだけで、いっぱいいっぱい だった頃に比べれば、格段の進歩だよ!」
窓から視線を戻した洋介が、感慨深げに呟く。
「観察と推理の積み重ね、だね。」
「それって、恋愛を語る時に 使う単語じゃな無いと思うんだけど。。。」
作品名:見覚えのある(双子と三つ子) 作家名:紀之介