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てっしゅう
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「空蝉の恋」 第三十二話

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「ねえ、佳恵さん。私ね、来年離婚するって話したでしょう?夫にそれとなく言ってみたのよ」

「ええ?そうなの。どうなったのかしら?」

「それがね、待つ必要なんて無いって言われて、離婚届出したの」

「急な話ね。そうだったの」

「うん、息子の養育費は半分ずつにする取り決めで、親権は私になった」

「あなた働いていないでしょう?負担できるの?」

「そうね。これからは仕事をするか、康生さんとすぐに再婚するかの選択になるわ」

「康生さんも離婚されたの?」

「うん、私がしたと言ったら、直ぐにしてくれた」

「なら、良かったじゃないの。幸せになれるのね」

「そうね、そう願いたいけど、人生なんてわからないからある程度の覚悟はしておかないとね」

「まだ若いからそんなこと考え無くていいわよ」

「ううん、それは違うわよ佳恵さん。人生には後半に山があり谷があると思っている。今一つの谷を越えたとしても、目の前にはすぐに山が見えてくる。いくら周りがお花畑でもよ。佳恵さんも離婚して人生の谷を越えたところだけど、これから先厳しい峠が来るかも知れないので、一緒に手を携えて歩いてくれる人を見つけた方が良いわよ。私が言おうとしている意味が解るわよね?」

「和仁さんとのことを真剣に考えたら、って言いたいのよね?」

「そうよ。離婚したんだから、堂々とお付き合いが出来る。彼は佳恵さんには申し分ないと考えるけど、そうじゃないかしら?」

「今すぐに再婚は考えられないの。するとしても娘が卒業して仕事を見つけてからって考えているの」

「どうして?別れたご主人から洋子さんの学校のお金を出してもらっているから、再婚したらそれは頼めなくなるって心配なの?」

「それもあるけど、再婚相手に洋子の世話を頼むわけにはいかないでしょう?私は娘と一緒に暮らしたいし、あの子も私と暮らしたいと言っているから、結婚して出て行くまで再婚はしないつもり」

「母と娘ってそういう関係になるのね。ある面、羨ましいって思える。じゃあ、和仁のことはどう考えているの?」

「恵美子さんと一緒ならお付き合いさせて頂こうかと思っているの。もし、誰かいい人が見つかったら、遠慮なく言ってくれれば迷惑にならないようにするわ」

「あら、冷たい言い方なのね。ショックだと思うわよ。まあ、男と女は気持ちが通わなければ会うことも億劫になると思うから、もう会わない方が良いのかもね」

「そう言ってくれると嬉しいわ。和仁さんとは酔っていたとはいえ、気を持たせるような態度を取ったことは申し訳ないと思うの。夫に責められた時に、自分にはやましい気持なんかないって言い聞かせたことが今になって良かったと思っているの」

和仁とはこれで会わなくなると感じた。