そわそわと(双子と三つ子)
入学式終了の講堂の玄関ホール。
私達は、お互いに自己紹介をしました。
「私は亜子。で、この子が姉の佳子」
「こちらが次女の多美さん。で、こちらが三女の佐美さん。私は長女の奈美です」
正面に立つ、3つの全く同じ顔。
私は思わず、驚愕の声を漏らします。
「三つ子さんって、珍しいですよね…」
「双子さんに、そんなに珍しがられても──」
面白がる声の奈美さん。
そんな事には感心を示さず、佳子が私の袖を引きました。
「…5人のそっくりさんだから、瓜二つじゃなくて…瓜五つだね! 亜子ちゃん♡」
反応に困る私の耳に、佐美さんと多美さんの言葉が届きます。
「実は私達、生き別れの双子と三つ子だったりする?」
「家に帰ったら…親父さんと お袋さんに、確認してみるか。」
作品名:そわそわと(双子と三つ子) 作家名:紀之介