新・覇王伝__蒼剣の舞い2【第1話】
“教えてください”と頼まずによかったと、内心ほっとしている。
「白虎さま」
「星宿でいいよ。君を見ていると清雅さまを思い出してね。ま、従兄弟だから似ていてもおかしくないんだが」
嬉しいような哀しいような。
「僕はあそこまで性格悪くありませんよ」
「やっぱり似ているよ。少なくても、吾が初めてあった清雅さまにね」
「いつなんですか?」
「朱雀には聞かれたくないな。喜んで飛びつくから。十歳の清雅さまなんて」
「十歳っ!?」
拓海の思考回路の迷走が、再び始まる。
どう考えて、どう結べは現在の清雅になるのか。
「驚いたよ。再会した時には完全に現今の清雅さまに出来上がっていた。当時の面影なんて微塵もなかった」
「その間に、何かあったんですね」
「だろうね。吾以上に玄武さまが驚かれたよ。叔父と云っても、一緒に暮らしていたわけじゃない。唯、清雅さまは玄武さまの前から八年間姿を消されていたそうだ。その間に何をしていたか、知っているだろう?」
「確か、各地を転戦と父が」
「そ。あの方の腕は実戦で鍛えたもの。この蒼国が誕生する前は、東領は夜盗や黒王の軍があちこちでやっていたからね。子供の時から死線を潜っていれば力はつくけど、本気でいかないとマジでやばい。稽古だろうと容赦はしないよ、あの人」
「肝に銘じます…」
白虎の星宿も認める最強の腕、清雅。
拓海は、何故かもっと彼の事が知りたくなった。変わっているのは、彼の従弟だろうか。だが、この時既にある運命の歯車は回っていた。
「見つけたよ。蒼剣の場所を」
怜悧な容貌に冷たい笑みをたたえ、彼は金色の眸を細める。
手にした鏡に映る蒼い輝き。
嘗てウォン覇王家にあった伝説の剣は、その時をひたすら待っている。
「蒼剣は蒼国にある」
「蒼国は、黒抄の黒王さまにお任せになられたのでは?白王陛下」
「吾が欲しいのは蒼剣だよ。覇王に導くという伝説の剣をね。だが、寧ろ吾よりお前が欲しいのではないか?心宿」
クスクス嗤う白王・聖連の前でその男は硬い顔を崩すことはなかった。
作品名:新・覇王伝__蒼剣の舞い2【第1話】 作家名:斑鳩青藍