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てっしゅう
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「空蝉の恋」 第三十話

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職場の歓迎会の朝、出掛ける前に洋子に帰りが遅くなると伝えた。
佳樹さんも一緒だから恥ずかしくない格好で出かけようと身支度をしていた。

「ママ、仕事に行くのにオシャレしているのね?」

「うん、六時からみんなで歓迎会をしてくれるというのよ。恥ずかしい服装では失礼でしょう?」

「そうね。特に斎藤さんには気を使うよね」

「斉藤さんに?」

「まあ、いいわ。とにかく楽しんできてよ。家のことは気にしなくていいから」

「はっきりとしない言い方して・・・じゃあ頼むわね」

娘は何が言いたかったのだろう。お世話になった斎藤さんに失礼が無いように、という意味合いだったのだろうか。遠回しに斎藤さんと仲良くしてね、と言いたかったのであろうか。

職場では店長が前もって歓迎会のため六時閉店と告知をしていた。
もう一人のパートさんと、店長と、斎藤さんが揃ったので予約してあるレストランへタクシーで出かけた。

偶然は恐ろしい。以前徳永に連れて来てもらった場所と同じであった。いや、同じと思われた。
有名なところなのだろう。
席に着いてコースメニューの前にビールで乾杯をした。

「では、今日はささやかながら、内田佳恵さんの入社歓迎と皆様の健康とご多幸をお祈りして・・・乾杯!」

店長の音頭で始まった。

「内田さんって最近離婚されたんですよね?」

そう聞き出したのは同僚のパート、吉岡だった。彼女は結婚していたが、子供が無く、夫が出張や転勤族なので今は一人暮らしをしていると自己紹介した。

「吉岡さん、お恥ずかしいですけどそうなの。少し落ち着きましたけど、これで良かったのかなあ~って思う時がありますね」

「私はいつも夫が家に居ないから、逆にいる時はとっても気を使うの。これでいいかなあ~とか、何をして欲しいのだろうか、とか思っちゃう。内田さんは離婚の原因は旦那さんの浮気だったの?」

聞かれると思った。さて困った。温泉の話は斎藤の前では話したくないと思うからだ。

「ええ、そうね。長年の積もり積もった不満というか、お互いに関心を無くしてしまったから、一緒に住んでいても仕方ないだろう、って夫に言われて・・・そのあと急に離婚って言われたので驚きましたけど、そうなのかなあ~って妙に落ち着いてハンコ押しました」

「へえ~そんなに簡単だったのですね。友達なんかは大げんかして、裁判までして揉めていましたから、ちょっと信じられないです」

店長が口を挟んだ。