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昔飼っていた猫

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 帰り、なかなかバスが来ないので、歩いて帰ることにした。山というのもあり、普通歩くような道はなく、車しか走っていなかった。私一人、歩いていた。
 周りの景色は緑ばかりで、少し癒されるような感じだったが、よく見ると暗い緑もあり、それを見ると癒された心は元に戻った。

 スマホの案内によると、右に曲がるように示された。そして確かに道は存在した。しかし、その道は車も走っておらず、白線もなく、ただガードレールとコンクリートの壁だけが両サイドに位置し、緑は一層暗くなり、雨もポツポツ降り始めた。
 雨足が強くなり、風も出てきて、危機感を覚えた。
 なんとか平地に辿り着いた時には、もうどしゃ降りで、折り畳み傘など役に立たないレベルだった。服は濡れ、カバンも濡れ、ズボンはさらに土が散り、靴には大量の水が浸入した。スマホの地図を頼りに歩いていたのだが、その電池も完全に切れた。道は分からない。ただ、東に向かえば帰ることができる、という原始的な考えに依存
せざるを得なかった。
 途中で雷まで鳴り始め、バリバリと怒鳴り声のようであり、雨はまた一層強くなり、傘を叩く雨粒のバシバシという聞き苦しい音を聴きながら、ぐしゃぐしゃに濡れてヘトヘトになった私の身体を容赦なく襲った。

 それはまるで、チョビが仕返しをしているように思えた。

 そういうふうな、ただの自然現象に変な意味を見出すのは好きではない。実際、天気予報でも天気が崩れると伝えられていた。
 だがあの状況下において、雨や雷をただの自然現象として認識することはできなかった。
 
 今更何しに来た、ふざけるな、もう遅い、どれだけ苦しかったか思い知れ、………

 チョビがそう伝えているようで、心が痛んだ。
 私は、歩きながら、再び謝った。もうそうするしかないと思ったからだ。



「俺が悪かった。ごめんな、チョビ」
作品名:昔飼っていた猫 作家名:島尾