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過ぎゆく日々

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戦争を知らない子どもたち


 この歌が町に流れていた頃、戦争というものはもう二度と起こらないものだと思い込んでいた。すべては過去の出来事。私たちは良い時代に生まれたのだと。
 その代わり、自然災害という噂に脅かされてきた。思春期の頃、富士山が噴火するという話が巷に流れ、私は結婚もできずに死ぬのだろうかと真剣に悩んだりした。
 しかし、そんな大災害は起こらず時は過ぎていった。おかげで結婚もでき、平穏な暮らしを当然のように送っていた時、突如として阪神淡路大震災が起こった。テレビに流れる映像は、とても現実のこととは思えず、ただただ唖然とするばかりだった。そして、東日本大震災―― 富士山こそ噴火することはなかったが、怖ろしい自然災害は本当に起こるのだという現実を目の当たりにした。
 
 そして、今度は隣国の暴走。まさかまさかの戦争、なんてことにはならないとは思うが…… でも、いかに平和憲法を掲げようと、相手が聞く耳を持たずに攻撃をしてきたら、どうしようもないではないか。時代の流れ、という大きな力には誰も逆らえないような気がする。
 亡き母は、関東大震災や戦争、洪水など数多の経験をしてきたと言う。その様子をよく話していた。今にして思えば、私は、それを他人事のように聞いていた。もうそんなことは起きない。起こるはずがない。そんな根拠のない確信があったように思う。
 
 それが最近、妙な空気になってきた。形ばかりだった避難訓練や、非常持ち出し袋が明日にも必要になるような、そんな危機感が時に頭をかすめる。
 歴史は繰り返す――
 私たち世代はただ激動の狭間を生きてきたに過ぎないのかもしれない。戦争を知らない大人たちが世の中の大半を占めるようになった今日、次の世代のために、変わらぬ穏やかな暮らしを残してあげることができるだろうか…… 少なくとも、人知の及ばない自然災害以外からは、守るべき義務はあると思う。平和の大切さを訴え続ける、そんなことくらいしかできないとしても。

作品名:過ぎゆく日々 作家名:鏡湖