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過ぎゆく日々

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おかあさん


 辛いつわりに耐え、生みの苦しみを乗り越え、迎えたわが子との感動の対面。そんな人生最高の幸福感に酔いしれるのもつかの間、授乳にオムツ変え、二十四時間休みなしの世話が始まる。そんな体力的に追い込まれた中でも、わが子の安らかな寝顔や、口元のちょっとしたほほえみで疲れは吹き飛ぶ。とはいえ、片時も目を放すことはできない。昔は家事をする時には、負ぶいひもで背中に括り付けてしたものだ。
 
 誰にでもおかあさんはいる。事情があって育ててもらえない場合でも、生後しばらくは愛情に包まれていたはずだ。
 そして、たとえ悪い大人であっても、この世に生を受けた時は真っ新な赤子で、おかあさん、あるいは誰かの手で大切に育てられたのだ。人間の赤ん坊は、それは手がかかるのだから。
 
 やがて、親の背丈ほどに成長すると、反抗期が訪れ、自立の準備が始まる。そして、再び親の有難さに気づくのはずっと後のことになる。自分が親になった時、あるいは親を見送る時などだ。
 親孝行、したい時には親はなし、というから、昔からみんな同じなのだろう。
 
 でも、親からすれば、手塩にかけたわが子が健康に育ち、幸せな日々を送ってくれればそれで充分なのだ。そして、できることなら、子どもに迷惑をかけずに生を全うしたいと思うもの。そんな関係が親から子へ、子から孫へと綿々と続いていくのだろう。
 
 それにしても、「おかあさん」というのは何と響きのいい呼び方だろう。温かさと安心感にあふれている。
 それに比べると「おばあさん」は…… 英語のように、上にグランドをつけるような洒落た呼び方はないものだろうか。おかあさんのおかあさんなのだから。

作品名:過ぎゆく日々 作家名:鏡湖