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過ぎゆく日々

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普通でない日々


 二〇二〇年――それは日本にとって輝かしい年になるはずだった。
 首相や都知事は華々しい舞台に立ち、国民は非日常の歓喜に沸く。ところが、年が明けて訪れたのは真逆の非日常だった。オリンピックが延期となったばかりか、毎年の恒例行事さえ取り上げられ、あげく仕事や学校などの日常生活までもが脅かされた。
 
 最初の頃は対岸の火事で終わるかに見えた。ところが気がつくと、まるでパニック映画の中に放り込まれたような日常になっているではないか!
 見えない未知の敵の恐怖、感染防止のための無情なまでの隔離、そして何より、終わりが見えないという絶望感――
 
 今、エッセイを書くとこういう内容になる。だから控えていた。いや、心が重くなって書けなかった。
 でも、この当たり前でない日々が日常となりつつあり、その中で生きていかねばならないのであれば、少しずつでも慣れるしかない。
 ワクチンや治療薬が開発されればきっと状況は良くなる。そんないつになるかわからない先の希望しか持てない心許なさ。この冬を乗り切れるのかが今から心配でならない。
 
 五年後の世界――どうなっているのだろう?
 ああ、あの時は大変だったね、とみんなでしみじみ語り合っているのだろうか? それとも、新しい日常が定着して、まったく別の世界になっているのだろうか?
 知りたくもあり、知るのが怖くもある。

                       2020.6.14

作品名:過ぎゆく日々 作家名:鏡湖