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過ぎゆく日々

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人生観


 人は、人生観が変わる瞬間に幾度か出合う。
 衝撃的な出来事に遭遇し一気に変わる場合もあれば、じわじわと浸食されていくようなこともあるだろう。
 
 そしてまさに今。戦時中のように目に見える恐怖はないので、何事も起こっていないようにいつもの生活を送ることは可能。でも、誰もが本当はそうではないことを知っている。放置しておいたら大変な事態になる可能性があることに気づいている。
 
 古い時代劇を見てふと思った。そこに出演している役者たちは今やほとんどが鬼籍に入っているのだと。画面に映る長屋をうろついている猫も、侍を乗せて走るあの馬だって。そもそも描かれている江戸時代の人々自体が誰一人、すでにこの世にはいない。そんな当たり前のことがなぜか今、心に留まる。
 
 人はいつかはいなくなる。あるいは突然いなくなる。それは、普段まるで意識していないこと。ところが、身近な人をなくした時や、災害を目の当たりにした時、突如心に深く突き刺さる。でもそんな打ちのめされた心も、時の力でしだいに癒やされていく。
 
 苦しみ悲しみを乗り越えて人は生きていく。昔から繰り返されていることだけど、近く起きるであろうと言われている未曾有の災害の数々を思い浮かべると、単なる苦難とは異質な気がする。今回がその序章でなければいいのだが。
 
 オリンピックの代わりにやってきたコロナ禍。人によって差はあれ、2020年というこの年は、それぞれの人生観に何かしらの影響を与えた年になるのではないだろうか。
 
                      2020.7.27

作品名:過ぎゆく日々 作家名:鏡湖