初秋の朝と夜
「後ろからはセパレーツ、前からはワンピースの水着を着て泳いでいます」
「あまり焼けてないね」
「プールなんです、全身美容になるので」
女の体をいくつしむように撫でまわした。そして、入れようとした。
「スキン、してください」
男がすなおに従ったので、女は太ももに手をまわし両足をいっぱいに広げた。
その動きをたしかめて、男は能動的になる。
「手でひろげて、いれやすくして」
女は指で花弁を広げた。
「男、好きか」
「好きです」
スキンをしたせいか、はげしい動きになる。
「がんがん、きて」
女が挑発する、このセックスが最後だから。
「俺に命令するのか」
男はその挑発的な言葉をやり返すように、激しい動きに変化した。性欲をすべて叩き込むように。女は添えを受け止める。受け止めれば、また声をかけてくれるに違いない。
口をしっかりつむって、快楽の波に耐えている、あるいは、口を開けて、ため息をつく、女が様々に快楽を表すのを楽しみながら、男は射精した。
「出ましたか」
「出たよ」
清算が終わる男を待っていて、ロビーで女が男に会釈すると
「いいねえ、気に入っている」
「また呼んでください」
前日までに考え抜いた段取りはことごとく成功した。セックスのために、こんなに頭を使ったことはない。もうこれまでの男性とのセックスがつまらなくなった。
「やりたいようにやればよい」
毒のある言葉だが、講師から届いたメールが再生された。初めての心地よいメッセージであった。彼氏と別れる決心がついたし、あの不倫の上司ともきっぱり別れよう。
サロンの経営者はもう60歳ぐらいか。
「あの人ね、この前食事した人よ、あなたに会いたいって」
「私とですか」
「チャンス到来、投資した分、回収しなくてわね」
妙な説得力がある。
「ホテルは、きっと、20万するような部屋でしょう、会員か何かの割引はあるでしょうけど」
マダムは慣れているのかどうか、もう場面設定を解説し始める。
「その夜のために、あなたに20万払ってもおかしくはないはずよ」
「そんなに払うんですか、よくわかりません」
「でも、満足してもらわないとね」
きびしく諭すように言うから、ちょっとたじろいだ。
マダムの勧めで、「もて女」「もて男」のコースを開設したところ、好評であった、楽しいが応募者はまだ少なくて、今のところ経費倒れだ。脱毛やエステなどの投資額も少なくはない。マダムから購入する服飾費もかさんでくる。
飛躍すると、これまでの人間関係、とりわけ仕事での関係が相対化されて、気分的に楽になる。いつか決断する時があると思いつつ、40を前にしようとしている。心身のバランスが取れた健康を目指したいと、心身の。
男からメール「気のせいか、街はロイヤルブルーが目立っています、黒ばかりだったから」
「そうですか、はやりと言うにはもうちょっとでしょうか」
「オナニーした」
「まあ、まあ、お若いのですね」
それはまだ序曲、女のすごいところをわからせてあげますね、とつぶやいた。
「煙が目に沁みますか、」
主客が入れ替わった。