「空蝉の恋」 第二十五話
「ママは見た目40ぐらいにしか見えないわよ。だから和仁さんとでも、斎藤さんとでも釣り合うって思う。それより、たくさんの人とお友達付き合いをすれば、そのうちママのことを本当に大切に考えてくれる男の人と出会えるって感じる。そう言えばテニススクールのコーチも若くて素敵な人だったわよね?」
「お友達ね・・・そうね。コーチは関係ないわよ」
一番気持ちが近い人のことを娘には否定した。
離婚したら自由に恋愛は出来る。そうなってからコーチとのことも和仁さんとのことも考えればよいと思う。今下手に動いて夫に秘密を知られたら離婚するにしても不利になる。そのぐらいの自制心は働かせないといけない。
帰ったらラインで徳永さんと和仁さんにしばらく会わないと連絡しようと決めた。
自宅に戻って早速斎藤優華から洋子へラインが届いた。
春休みが終わる前に会いたいと言ってきたのだ。始業式が始まる直前に我が家へ彼女はやって来た。
娘が家においでと言ったからだ。
春らしい可愛いワンピースを着ていた優華は、きれいというより妖艶にすら見えた。
どうしてこれほど大人っぽいのかと感心させられてしまう。
「いらっしゃい。今日はゆっくりしていってね。夕飯の用意もするから食べて帰って」
「ありがとうございます、おば様」
「おば様ね、ハハハ~」
「失礼でしたか?謝ります」
「ううん、いいのよ。お姉さんでは無いからね。気にしないで」
「父が言っていました。佳恵さんは可愛すぎるって。とても洋子さんのお母様には見えないと思います。姉妹って言われないですか?」
「あら、お上手なのね。お父様は素敵だし、お若いし、優華さんには自慢よね?」
「父は父としか感じません」
「まあ、かわいそうな言い方ね。私は洋子のことは自慢なのよ。お父様もあなたのことはご自慢よ。お母さまのことは辛いかも知れないけど、しばらくはあなたが力になってあげて頂戴ね」
「ありがとうございます。おば様は父が言う通り素敵です。お母さんになってくれたらいいのになあ~」
「まあ~嬉しいことを言ってくれるのね。お父様より年下で独身だったらすぐにOKしたのにね」
まだ会って二度目だったのにこんなことを言われて、私は少し驚いた。
しかし、彼女の思いは別にあったのだ。
作品名:「空蝉の恋」 第二十五話 作家名:てっしゅう