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てっしゅう
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「空蝉の恋」 第二十五話

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私と洋子は白骨温泉の帰り道、レンタカーを駐車場に停めてバスで上高地へ立ち寄った。
雪が残る穂高連峰の峰々の美しさと、梓川の雪解け水の音に別世界へ来たように感じられた。

「洋子、いいところね。初めて来たんだけど、さすがに人気の場所って思うわ」

「そうね、ママ。こんなところに彼と二人で来たら、帰りはもう・・・」

言いかけて恥ずかしいと思えたのか、くすっと笑って娘はごまかした。

「何ということを言うのあなたは。それって私に向かって言ったの?」

「そうよ。ママは和仁さんだって、昨日の斎藤さんだって、悪い気はしてないでしょう?娘だから母親の気持ちがちょっとは解るのよ。ごまかしてもダメ。パパとはその内離婚するんでしょう?もう解放されても良いと私は思っているの」

「あなたの言葉とは思えない。ママはそんな女じゃないわよ」

そう言ってはみたものの、心の奥を覗かれて恥ずかしいと感じていた。
佳樹さんは35歳だと言っていた。18歳でデキ婚をして、奥さんは去年病気で亡くなったと話していた。私とは15歳の歳の差がある。徳永さんだって10歳の歳の差を強く感じているのに、15歳だなんてありえないと思う。

「ママ、そんな女って何よ?」

「不倫するって言うこと」

「不倫じゃないよ。パパとは離婚するんだから」

「まだしてないからね」

「心の中ではずっと前からしてたでしょ?」

「ええ?してないわよ。どうしてそんなこと聞くの?」

「ママに・・・幸せになって欲しいから」

「洋子・・・私はあなたとこうしていることで十分幸せよ」

「私は彼が出来たらママとは離れるよ」

「彼がいるの?聞いてないけど」

「二十歳よ。告白されている人は何人かいるの。この頃ね、ママを見ていて感じられることがあるから、一人とお付き合いしようと思っているの」

「ええ?私を見て何を感じたの?」

「ママのことを好きだと言ってくれる人とお付き合いすると大切にしてもらえるって考えるの。年下ならさらに強くそう思う。私もね、お付き合いしようと思っている人は一つ年下なの。イケメンじゃないけど、とっても優しい人って感じられる。女ってわがままでしょ?だから怒らない優しい人が良いのよね、間違ってないよね?」

「そうだったの。洋子のことを大切に考えてくれる男性がいいわよね。年齢差は一つぐらいなら気にすることは無いと思うわよ。あなたも大人になったわね。そうよね、私も考えたら50歳なんだわ」