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てっしゅう
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「空蝉の恋」 第二十四話

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白骨温泉の泡の湯では、女性客が入浴しやすいように特別の出入り口が作られている。浴槽に入るところで全身を見られないように、工夫されていた。

勿論この入り口の前に居座れば、当然女性が入ってくるところは見える。混浴はいかに工夫されていても女性はある程度の覚悟が必要になる。
広い湯船もこの日は30人ぐらいでぎっしりという感じになっていた。
洋子と私は奥まで行くことが出来ず、男性の出入り口の近くで落ち着いた。

「ねえ、ママ。人気があるのね、ここは。若い人からママたちの世代までたくさんの男女が入浴しているから驚いたわ」

「そうね、雑誌でも取り上げられているし、こういうひなびた場所だから余計に情緒があるって思えるわね」

直ぐ近くにいたカップルの男性の方が声をかけてきた。

「今日は混んでますね~どちらからお越しなのですか?ボクたちは名古屋です」

「同じですね。本当に人気がありますね、ここは」

私はそう答えた。なかなかの男前の人だ。彼女らしき相手も美人だった。

「ボクたちは初めてなのですが、何度か来られているのですか?」

「私は二度目ですが、娘は初めてなんです」

「そうですか~お嬢さんとっても美人ですね。それにお母さまもそれ以上に若くて綺麗だ。みんな見ていますよ、ここにいる男性たちは。今日は得をしたって」

「そのようなお世辞を言われては困りますわ。奥様もお綺麗じゃないですか」

相手のお世辞に合わせてそう言った。

「ハハハ~奥様じゃないですよ。娘です」

私は人に聞こえるような声で、「ええ!」と叫んでしまった。娘も同じようにビックリした顔になっていた。

「娘はまだ十六なんです。よく父親について来てくれたと感謝です」

「そうでしたの。大人に見えましたから奥様かと。うちの娘は二十歳ですの」

「大学生ですか?母娘で出かけるなんて素敵ですね。こういうことは旦那さん抜きが楽しいですよね、ハハハ~。うちは妻が居ないのでむりやり娘を誘ったんです。混浴を嫌がりましたけど、内緒ですがバスタオル巻いています」

「バスタオルを巻いて入ってはいけないのでしたか?」

洋子はそう尋ねた。

「ええ、普通はそうですね。混浴なので許されている部分はありますよ」

私たちはこの親子と自分たちも親子ということで仲良く話をしていた。娘は相手のお嬢さんの傍に近づき話をしていた。
当然そうなると私は父親の方と会話をする羽目になっていた。
距離が近くなって覗かれるのが恥ずかしかったから両手を胸に当てて見えないようにしていた。