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社会に不適合な二人の

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ころすけか


 私と弟は一時期同じ飲食店でアルバイトをしていたことがあります。
 そのときに働いていたのは焼き肉屋だったのですが、夕食時にはかなり忙しくなる場合もありました。
 焼き肉屋なもので、正月やお盆などの奮発するような日には特に忙しくなります。
 そのような時は、厨房は殺気立つほどにてんやわんやになるのでした。

「オーダーはいりまーす。」
「はい、かしこまりましたー。」
 大量に垂れ流される伝票に厨房の店員は止まる暇もなく料理を作っていきます。
 そのとき私はホールで走り回り、弟は厨房で手を動かしていました。
「オーダーはいりまーす。」
「はい、かしこまりましたー。」
「オーダーはいりまーす。」
「はい、かしこまりましたー。」



 そうやって、一時間以上も絶え間なく厨房にオーダーが流れ続けていました。
「オーダーはいりまーす。」
「はい、かしこまりましたー。」
 その頃には、もはや厨房のいらだちは頂点に達し始めていました。
「オーダーはいりまーす。」
「はい、かしこまりましたー……もー殺す気かー。」
 忙しさに耐えかねた弟が、ついに吠えました。
 ちょうど私がオーダーを受けたところだったのですが、厨房が殺気立っていても受ければ伝えなくてはいけないのでした。
 私は厨房にオーダーを流しまして伝えました。
「オーダー!なりよー。」
「もーコロスケかー!」
 はっはっはと店長達が笑って、何事もなかったように仕事を再開するのです。
 その店で働いていた時の、忙しさが酷いときにする私たちの気張らし方法でした。

――――
[焼き肉店]…賄いが肉であることが主な魅力。
[殺す気]…と書いてコロスケとも読める。とか冗談を言っていた。
[コロスケ]…藤子・F・不二雄先生の漫画の登場人物。コロッケ大好き。言葉の最後に「なりよ」と付ける癖がある。

作品名:社会に不適合な二人の 作家名:春川柳絮