社会に不適合な二人の
会話がかみ合わない
祖母と弟と私で珍しく一緒に夕食中。土鍋に豆腐を一杯入れて湯豆腐を突っついているときの話。
買ってきた湯豆腐は近所のスーパーで私が買ってきた木綿豆腐でした。
「最近の豆腐は木綿でも絹ごしみたいだね。」
「最近の木綿はつるつるやらあ。そういえば隣のお爺さんだけど、あの人この前80になったんやって――」
と、豆腐と関係のない話を始める祖母。その話に全く関わらず。
「ナイロンごしは無いの。ナイロン漉しは。」
「ナイロンごしかあ。」
「絹ごしと木綿ごしがあるならナイロンごしが有って良いじゃない。」
「ナイロンごしは食べたくないなあ……。」
「――それでお爺さんの喉からぽろっと出てきたのが木綿豆腐だったらしいんやて。」
「へえ。」
祖母もこっちの話を全く意に介しません。
しかしナイロンごしって、もしあるとしたら何なんでしょう。
絹漉しは木綿でこした豆腐より舌触りが絹で作ったようだから絹漉しだと言うそうですが、それならナイロンごしは言葉の印象で化学物質で代替した豆腐の代用品っぽいですね。
やっぱり食べたくないです。
作品名:社会に不適合な二人の 作家名:春川柳絮