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マル目線(後編)]残念王子とおとぎの世界の美女たち

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すると、王子は素早くふり返って人魚姫の手首を掴む。

「姫。」

いつになく、低くて鋭い声色に、人魚姫は王子を見上げた。

「海底国では許されるのかもしれませんが、我が国では、特別な関係にない女性から男性に抱きつくことは不敬罪として処罰されます。ぜひ、そこをわきまえて頂きたい。私はあなたを処罰したくないので。」

女官の通訳で理解したようで、人魚姫は王子に掴まれている腕から力を抜いた。

王子は手首からそっと手を離すと、人魚姫を柔らかな笑顔で見下ろして、女官を一瞥した。

女官は慌てて頭を下げる。

王子は、そのまま部屋を出て、足早にパーティー会場へ向かう。

苛立っている様子が見てとれるけれど、呼ばれないので私はそのまま陰に控えた。

(不敬罪なんてないけど、よく思い付いたな。)

咄嗟にそれらしいことを言った王子に、私は感心していた。

いつもは守ってあげたくなるその後ろ姿が、今日は頼もしく見える。

(がんばれ、王子。)

私は心の中で、密かに応援した。