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てっしゅう
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novelistID. 29231
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「空蝉の恋」 第二十話

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確実に酔っぱらっていた。恵美子は康生と頑張るとか言っていたけど、これでは無理だ。それは康生にも言えた。やがて二人は敷いてある布団に転がってしまった。
笑ながら和仁が言う。

「ちょっとペースが速かったなあ~そろそろおれたちもやめて寝ようか?」

「うん、そうね。よく飲んだわ。ちょっと外の風に当たりたい」

「いいね、そうしよう」

これがいけなかった。
旅館の中庭から夕方に入った露天風呂が見える。この時間も夜間照明が灯されて、数組の男女が入浴していた。

「涼しくて気持ちいいね~」

「ええ、そうね。ちょっと飲み過ぎたわ」

「酔って言うんじゃないけど、佳恵さんは本当に可愛いよ」

「また、そう言うことをいう」

「本当だから仕方ないよ。誰にも渡したくないってずっと思っているんだ」

「誰にもって、夫がいるのよ」

「それを言うなよ。今は二人だけの時間を楽しみたい」

「そうね・・・」

この返事が良くなかった。
直ぐに和仁は私を抱きしめた。

「ええ?急に・・・イヤ!」

その言葉を塞ぐようにキスをしてきた。
すぐに離して、

「見られるじゃない!こんなところで」

「ゴメン、我慢が出来なかった」

「私のことを大切に考えてくれるのだったら、嫌がることはしないで」

「おれはいつも我慢して我慢して、してはいけないと思うことをやってしまう。本当にダメな男なんだ・・・」

そう話すとその場に座り込んだ。

「和仁さん、そんなこと言わないで。ねえ、立って」

私は腕を取り立たせるようにした。

「部屋に帰りましょう」

寄り添うようにして部屋に戻り、恵美子と康夫が熟睡している隣で寝た。
眠るまで和仁と私の手は繋がれていた。
やがて和仁の寝息が聞こえてきた。少し距離を置いて寝返りを打ち、私は考えていた。

抱かれることは無かったけど、和仁の心の弱さを見てちょっと気持ちが揺らいだ。徳永と言い、年下の男性の弱さを見て自分の中に助けてあげたいという思いがそのまま恋愛へと発展してゆくパターンを見つけたようだった。
二人の男性と付き合ってゆくことは許されないと言い聞かせる。しかし、
私は徳永への強い思いと同時に和仁とも、このままに出来ない複雑な気持ちがあることを否定できなかった。