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てっしゅう
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「空蝉の恋」 第二十話

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混浴の露天風呂に入った四人はたわいもない話をして長湯をしていた。
夕飯の時間が来たのでそろそろ出ようと出口の方へ向かうと、気になっていた男性の視線が再び鋭く刺さって来た。
更衣室で恵美子にその話をした。

「ねえ、恵美子さん。さっきね、お風呂で私のことをじっと見ている男性がいたのよ。何だか怖くて・・・顔見知りでもないのに」

「あら、そんなことがあったの。佳恵さんは可愛いから見られていたんじゃないの?男の人って好みのタイプだとそうすると思うわ」

「ううん、そういう視線じゃないって感じられた」

「どういうこと?」

「うまく言えないけど、ほら探偵とか警察とかにつけ狙われているような視線って言うみたいなじっと見る目だったの」

「あなたが見張られている、って言うこと?」

「それは無いと思うけど、よく解らないけどそういう感じに思えたの。気をつけないと。だから、今夜はあなたと一緒の部屋にしてよ。約束して」

「まあ~ここまで来たのに和仁が可哀想じゃない。最後までしなくていいから、一緒に居てあげてよ。私は康生と一緒に居たいもの」

「そう言うと思った。でも、もしさっきの男性が誰かに頼まれた探偵だったり、私が知らないだけで向こうは私のことを知っている人だったら、和仁さんと同じ部屋で泊まったと言うことが誰かに知られるということになりかねないのよ」

「誰かって、まさか旦那が疑って雇った?なんて思うの」

「そうは思わないけど、夫の知り合いだったとしたら怖いなあ~って感じたの」

「そんな偶然ってあるのかな?ここは長野県だよ。それに山奥」

「偶然なんてこういうところで起こるから偶然って言うのよ」

「なるほど、案外頭いいのね佳恵さんって」

「もう、茶化さないでよ。真面目に話しているんだから」

「わかったわよ。じゃあ、四人でお部屋使って、泊まればいいでしょう?その代わり、私たちは遠慮しないからそのつもりでね」

「そうね、それでいいわ。和仁さん、がっかりするのかしら」

「そりゃそうよ。あなたの事好きだからねあの人。諦めたんじゃなく、ペースを守っているだけ。今夜は少しだけでも近づくようにしてね。まあ、私たちを見てたら佳恵さんもその気になると思うけどね、ハハハ~」

「笑い事じゃないわよ、もう。反対側向いて寝るから」

「ハイハイ、この話はみんなにも言うの?」

「そうね、知っていてくれた方が良いと思う」

夕飯を済ませて、飲み足りないビールを部屋で飲み始めた。
油断していたわけではないが、恵美子も居るし、泊まりだということに安心感を感じていたのか、いつもより飲むペースが速くなっていた。

「佳恵さんって、いけるんだね。恵美子はもう飲めないから、これからは三人で飲もう」

「恵美子さん!頑張って飲んでよ。一人にしないで・・・」