赤襟の清ちゃんと、三毛猫のたま 36話~40話
「ふぅ~ん。で、あんたは、もう日本舞踊を踊れるの?」
「見よう見まねで、奴さんなら舞えます」
「あんた、歳はいくつ?」
「15です。この春、中学を卒業しました」
「そうか、15か。あたしは、17。高校3年生で名前は、恭子。
大学を卒業したら、パパを手伝って、家業の酒蔵を継ぐと決めているの。
お母さんが亡くなったのは、あたしが7つの時。
それからは口うるさいおばあちゃんと、パパとあたしの3人暮らし。
わたしはこの喜多方で、歴史ある大和屋酒造の、10代目になるの」
「わたしは芸者見習いの清子です。こっちは、親友の三毛猫のたま。」
懐から顔を出しているたまの頭を、清子が撫でる。
6月半ばを過ぎた川原には、すでに、夏の気配が濃厚に漂っている。
長い竿を操っている鮎釣り師たちの背中が、水面の照り返しを受けて
キラキラと銀色に輝いている。
(暑くなりそうですねぇ・・・・)
清子が日傘をパタンとひろげる。
『はい』ともう一本。恭子に向かって日傘を差し出す。
『あら。あたしのために、わざわざ日傘を用意してくれたのかい?』
嬉しそうに恭子が目を細める。
そんな恭子へ清子が小さく頭(かぶり)を振る。
「いいえ。恭子さんは色が白いから、これを持って行きなさいと、
市さんが渡してくれました。
ウチはまだ、そこまでの配慮はできません。
見習い中の身ですから」
作品名:赤襟の清ちゃんと、三毛猫のたま 36話~40話 作家名:落合順平