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ろーたす・るとす
ろーたす・るとす
novelistID. 52985
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便利屋BIGGUN1 ルガーP08 別バージョン

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 しかしファイルは偶然ジュンが持ち出してしまったため公開されなかった。俺達は次の手を考えていたのだが、そこにローランドの娘がこの街に来ているという通報を受けた。ジャック・マクソン、早安の親父からだ。あの日俺は念のため探りを入れようとジュンに接触した。
 そしてローランドのファイルから黒幕がコーツであることを知ったのだ。
これが今回の事件の真相だ。
 俺が初めてジュンを見たのはラーメン屋がくれた資料の上だ。なんて事のない隠し撮りの写真とプロフィール。それが本当の出会いだった。
「ジュンちゃん、どうしてるかね。あ、はまった。爆弾置く」
 アリスの話し方はいつもと違って感情がこもっていなかった。
「俺の知ったことじゃないさ。ほい、竜撃撃つ」
 ああ、さっきから語尾につく罠だの爆弾だのの不穏な言葉はゲーム内のやり取りだから気にしないでくれ。
 俺は悪党を殺した。それは間違いない。
 それで何になったかなんてどうでもいいことだ。
 善か悪かなんてのも論外だ。
 これが俺の仕事だ。ただそれだけのことだ。
 テーブルの上の緑色のソーダ水の泡が小さな音を立てて弾けていた。
 事務所の棚に写真が飾られている。
 俺達BIG・GUNとジュンが写っているあの写真だ。みんな笑っている。
「あ、やべ落ちた」
「へたくそ」
 落ちたとはミスの事で3ミスでゲームオーバーだ。くそ、この巨乳め。自慢するだけあってやけにうまい。
「やほー、ひま? 暇そうね」
 突然涼風のような声が事務所に通り抜けた。
 数日間俺達の中心にいた娘、セーノ・ジュン・ローランドが入り口に立っていた。
 今日は青い長袖のブラウスで下はやっぱりミニスカート。ショートブーツも相変わらずだった。金色の長い髪も緑色の大きな瞳も日差しのような笑顔も変わりない。
「また家出してきちゃった。宿貸して」
 明るい声だった。不自然なほど。だからか、俺の答えは逆に余所余所しくなっていた。
「ここは便利屋で宿屋じゃないぞ」
 俺の態度など全く無視しジュンはマイペースに話を続ける。
「またまたー、泊めてお風呂とか覗きたいんでしょー」
 のぞいていいならいくらでも泊めてやるが。
ジュンはアリスにこんにちはーなどと声をかけながらパタパタと店に入ってきた。
「お邪魔そうだから、一人で捕獲しとくわよ」
 ゲーム機から目を離さずアリスおねーさんは2階へ上がって行った。ゲームを中断しないところはさすがおたくである。レアアイテムでるといいな。
「あ、これ」
 ジュンが棚の上の写真に気がついた。手にとってじっと見つめていた。
「ジムは?」
「外出中」
「三郎君は?」
「警察に事情聴取中の恋人に会いに行った。意外とまめなんだ」
 ベンに視線が移ってさすがに表情が曇った。
「お前のせいじゃない。気にするな」
 まぁ無理な話だろうが。軽くうなずいたようには見えた。
「これちょうだい」
 構わないがスタンドは返せよ。
「ねぇ、ケンちゃん」
 少し間を置いてジュンは呼びかけてきた。真面目な声だった。ちょっと焦る。
「まだメールの返事返ってないわよ」
「ドタバタしてたから忘れたな」
 さらに突っ込んでくるかと思ったがいたずらっぽく笑いやがった。
 そして金髪の美少女は一拍置いて静かに言った。
「もう変な仕事やめなよ?」
「ん・・・そうだな」
 それもいいかもな。俺は本気でそう思った。
 そこへ。
「もし・・・BIG・GUNとはこちらですか?」
 三人組の中年男が来店した。全員スーツで帽子まで目深にかぶっている紳士たちだが何か思いつめた表情である。見るからに普通じゃない雰囲気を漂わせている。真剣で影があり「背徳」の怯えも見える。「仕事」の依頼人によく見られる特徴だ。
ジュンの表情がこわばった。
「はい、いらっしゃい。御用は?」
 腕を組む振りをしてショルダーホルスターのベレッタに手をかける。すると真ん中のちとハンサムな男がにこりともせずつげた。
「ジャック・マクソン氏の紹介で来ました。あなた方がNo.1だと」
「話は聞いています。奥の部屋へ」
 俺は三人を事務所奥の応接間に通した。ジュンの横を通る時、中央の男は軽く会釈したが帽子までは取らなかった。ジュンにはカタギの仕事の話ではない事が確信できたのだろう。俺にクレームをつけようと口を開いた。
 そのかわいいお口が言葉を発する前に俺はおどけて言った。
「悪いな、ちょっと店番頼むぜ」
 返事を聞かず俺はドアを閉めた。
 ふくれっ面をしたちょっとセクシーな美少女の姿は分厚いドアの向こうに隠れた。

The end.