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ろーたす・るとす
ろーたす・るとす
novelistID. 52985
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便利屋BIGGUN1 ルガーP08 別バージョン

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 驚いた事に奴はまだ息があった。だが、時間の問題か。
「強いね・・・兄ちゃん」
「地の利だ。アンタ怪我してなきゃ相打ちくらいになってたかな」
 奴は笑っていた。何故笑う。
「やっぱり兄ちゃんとはやりたくなかったね」
「同感だな」
 俺はつい本音をこぼしてしまった。
 奴の手にはまだ銃が握られていた。100年以上前のドイツの自動拳銃。古過ぎる銃だ。だがこいつにはこれでなきゃ駄目なんだろう。俺にはわかる。やつは最後にそれを俺に向けるかと思った。だから俺の銃はまだ奴に向いたままだ。
 しかし奴は何故かそれを手放した。
「何故踏み切りの警報を鳴らした。騒ぎを聞きつけられて人が集まれば不利だったのはあんただぜ?」
 俺はつい聞いてしまった。 そしてやつは笑って答えた。
「電車が突っ込んだら大事故になります・・・よ?」
 それが最後の言葉だった。
 殺し屋が仕事中に人の心配か。
 勝利の快感は湧かなかった。
 奴の無様な死体。
 俺は自分を見ているようでどうにもやりきれなくなっていた。

ACT.3 ルガーP08
 
「もしもし、ヒガシ・コーツ議員だな?」
 突然の非通知の電話に向こうは不機嫌な声だった。まぁ取り込んでいるだろうしな。
「君は?」
「よくご存知かと?」
電話越しだがやつの血の気が失せているのがわかった。俺は平然と続ける。
「そこに女の子がご厄介になっていると思うけど」
「知らんな」
 内心狼狽してはいたがそこは国会議員だ。表には出さない。
「指一本触れるなよ」
「なんの事かわからんな。大体ここがどこだか君は知らんのだろ?」
「ここだよ、ここ」
 同時に1階から爆音が聞こえた。庭に煙が立ち込めている。スモークグレネード。まぁ煙幕だ。
「ローランドもここは知らないはず・・・と思ってるでしょ? 薬屋のおばさんは知ってたんだな。裏切るはずがない? 還暦過ぎた親父より若い恋人の方が大事だったみたいだよ」
 電話は切れた。

 街の北部、緑が多々残る丘陵地帯に今回の黒幕ヒガシ・コーツ国会議員の隠れ家・・・まあ別荘だな、はあった。名義はベイファンの鈴木同志。2階建て、庭、家共にかなりでかい。まさに豪邸。三郎が探ったら奥さんあっさり場所を教えてくれた。
ラーメン屋からの情報で家の大体の間取りや、普段いる人間たちも把握している。ボディーガード代わりに例のセミナーの若い奴らが10人ほどが最近常駐しておりコールマンもたまに顔を出すと聞いている。
そして何と言っても怪しげな中年男が入り浸っているというのが決め手だった。
あいつ、震える殺し屋のことだ。
あたりはもう暗くなっていて視界は悪くなっていた。加えてたったいま三郎がスモークグレネードをぶちこんだので肉眼ではしばらく何も見えない。俺達は赤外線暗視鏡を装備していた。スモークグレネードは煙を吐くだけの代物だ。ジュンが巻き込まれても問題はない。まぁ文句は言うだろうがな。
 俺は戦闘服に着替えていた。ガンベルトには拳銃、スタングレネード3つ、サブマシンガン予備弾倉3をつけてサスペンダーで吊る。サスペンダーにはコンバットナイフも差してある。
 拳銃はベレッタM84では心細いため世界最高のコンバットオート「グロック17」を選んだ。
 20世紀の後半に発表された野心作で発表後の拳銃達に多大な影響を与えた。17連発という多弾装。ヘキサゴナルプロフィールというパワーロスの少ないライフリング。セーフシステムと呼ばれる他に類を見ない機構。そして何より特徴的なのはフレームがポリマー樹脂製ということだろう。
 ベレッタと比較すると無骨極まりない野暮ったい銃だが9mmパラベラム弾を使用するこいつは威力的にも頼れる奴だ。
 とはいえこいつは予備兵器でメインウェポンはさっきも使ったH&K MP5。今回はフルサイズでサイレンサー付のSD6タイプを使用する。
 おつむには赤外線暗視鏡をかぶった。もう夜なのだ。
 最後にショルダーホルスターにグロックの予備弾倉とお守り代わりの拳銃をもう一丁吊るしておいた。
 さて行くか。無線で相棒に呼びかける。
「三郎、いくぜ」
「おう」
 大きく息を吸って、吐き走り出す。赤外線スコープには室内で右往左往する人影が映し出されている。赤外線を映す暗視鏡なので壁も透けて熱を発生している人影が赤く動いて見えるのだ。そのうちのどれがジュンなのか、ま接近すれば小さいからわかるだろう。俺と反対側、裏口のほうへ走る影が見えた。三郎だろう。裏は入り口が少ない。俺が先に突入したほうが奴は入りやすいだろう。俺は庭へまわり人影の少ない窓を撃った。サイレンサーで発射音はかき消されている。俺の位置はわかるまい。煙幕の中やつらは窓ガラスが割れた音に引き寄せられ部屋に入ってきた。3人入ってきたのを確認して部屋の中にスタングレネードを放り込んだ。
 閃光と大音響がとどろく。
 殺傷力はないがまともに食らった奴らは悶絶して倒れた。目はくらみ鼓膜もやられて失神している。当分行動不能だ。
 残っていた連中は二手に分かれた。しぐさからして皆拳銃を抜いたようだ。廊下から部屋に向かう者、それから庭から向かおうと外へ飛び出してきた二人。
 俺はMP5をフルオートに切り替え腰だめでなぎ払うように発射した。二人の脚に命中しうつぶせに倒した。訓練された者ならその状態でも反撃できただろう。だがこいつらは素人だった。何が起きたか把握できずパニック状態のようだ。
銃を乱射されたら危ないのですばやく接近し二人とも蹴りを入れて失神させる。その時のうめき声に聞き覚えがあったので暗視鏡をずらして顔を確認した。
 こいつ例の73メガネじゃないか。
 約束通り、用ができたからこっちから来てやったぜ。
 MP5の弾倉をチェンジ、俺は自称友人にそれ以上目もくれずやつらが出てきた窓から室内に侵入した。
 裏口のほうから三郎が侵入してくる。それも知らず臆病者一人が裏口へ逃げていった。一瞬で打ち倒された。殺してはいないだろう。殺さなくていいやつは殺さないのが俺達の流儀だ。
「ターゲットは上だろう」
 三郎の声が聞こえた。
 振り仰ぐと2階に人影が二つ。と、動いてるのがひとつ。流石に目が速い。
 さっきも言ったとおり間取りは頭に入っている。この部屋から廊下に出ればすぐに階段がある。
「俺がいく。1階は任せた」
 廊下へ飛び出し階段へ。2階はスモークの影響はなかった。明かりもあったので暗視鏡は額に跳ね上げる。
 階段を駆け下りてくるやつがいた。コールマンじゃないか。奴が俺に気づきあっと声をあげる前に俺は引き金を引いていた。
 さっきの73と同様弾幕に足をすくわれコールマンは前方に転倒した。先ほどより気の毒だったのは階段を降り始めたところだった事だ。
 やつは打ち捨てられた人形のように階段を転げ落ち、俺がかわしたもんだから一番下まで落下して動かなくなった。まぁ知らんわ。
 階段を上り人影があった部屋の前へ移動した。中の声を聞く。先ほど聞いたコーツの声がする。どこかに電話をしているのだろう。無駄だ、もう遅い。
 1階の方はしばらくドタバタが聞こえていたが、すぐに収まった。三郎は仕事では最高の相棒だった。あくまで仕事でだけな。