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ろーたす・るとす
ろーたす・るとす
novelistID. 52985
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便利屋BIGGUN1 ルガーP08 別バージョン

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 驚いたことに73男はまた食い下がってついてきた。こういうのはストーカーとして撃ち殺したらいかんのだろうか。少なくとも俺の倫理には全く反しないのだが。
「今日も警察に行くのだがついて来るのか」
 警察と言われるとさすがに奴は退散した。警察署は例の開かずの踏切を越えていけば割と近い。
「ねぇ本当に行くの?」
「他に行くとこないしな。話聞くんなら警察に直接聞いたほうがいいだろ。娘なら色々教えてくれるかもしれないぜ」
 ああそうか・・・とジュンは納得してついてきた。護衛するにしても警察署なら楽なのは間違いない。
 踏み切りをうまく越え南口から北口に入ると町並みは少し都会っぽくなる。とはいえ木造2階建ての商店街が鉄筋3階建ての町並みに変わる程度だ。しかし人通りは増え、俺の警戒心もやや増していく。踏み切りを渡ってまっすぐ歩きどんつきがこの街のメイン商店街「グリーン商店街」だ。個人商店やチェーン店が並ぶDクマ前に次ぐ賑やかな所である。左折してこの通りを進みゲームセンターを右折すると警察署まではもう少しだ。商店街から外れるためやや人通りは減り左に警察署、右に郵便局が現れる。そのちょっと手前に動物病院がある。その前に立つ男を見つけ俺は足を止めた。
 自然に体が緊張してきていた。
 もう暑いだろうと思われるモッズコートを着た男が病院の中の動物たちを見つめていた。
 なんて顔してやがる。子供みたいな無邪気な顔で微笑んでいた。大人がそんな顔をしているとかえって不気味だ。狂気すら感じる。
 俺の視線に気づいてか振り返るとにこやかな笑みを浮かべてこちらにやってきた。
 イタリア系だろうか。背は俺より高く歳はずっと上。40くらいか。ブラウンの髪と髭を汚らしく伸ばしている。表情とは裏腹に・・・感じる。この男は危険だ。
 俺は一歩前に出てさりげなくジュンの前に立った。
「怖がらないでくださいよ、お二人さん」
 男は俺の5m手前で立ち止まり片手を挙げた。その手はわずかに震えていた。肩も・・・コートなんか着込んでいるくせになぜか震えている。
「あたしゃ動物が好きでね」
 くるりと大げさに背を向ける。大きな背中だ。
「つい見入ってただけなんですよ」
 ガラスの向こうを指差す。柴の子犬が3匹じゃれあっていた。確かに可愛らしい。だが俺は子犬に心を奪われている場合じゃ無い。
「震えてるぜ、病気?」
 クスリ・・・か?
 男は恥ずかしそうに答えた。
「病気・・・なんでしょうね。でも大丈夫、心配には及びませんよ」
 心配なんかしねーが。
「警察に用事?」
 緊張を表に出さないように問いかけた。
「ええ、まあね」
 男はククッと笑った。どう見ても・・・正常な人間ではない。ジュンも感じ取っているのだろう。俺の後ろから出てこようとはしなかった。
「あなたを知ってますよ。今朝の新聞に出てた」
 確かに乗っていた。駅前の銀行強盗とDクマの一件。Dクマのほうはまだ俺と確定していないから俺の名は乗っていなかったが銀行のほうはデカデカと3面記事に乗っていた。あんまり好意的な記事じゃなかったな。
「すごいですね・・・三人も撃ち殺すなんて」
 新聞と違ってこの男は好意的なようだ。しかし褒められる事でも無いだろ。
「二人だよ。銀行前は」
 Dクマ前のドンパチはまだ報道されていないはずだ。だがこいつは・・・。
「うふ・・・そうでした。あなたと喧嘩はしたくないですね・・・」
「俺もだよ」
 男はまた俺達のほうを向き、体をかがめてまたククっと笑った。
「何もしませんよ、あなた方には。あなたが私に何もしなければね」
「信用していいかな」
「ええ、少なくとも今は」
 今は・・・か。
 男は警察署の中をちらりと覗き込んだ。こちら側は警察署の裏口に当たりパトカーの発進口や中庭がある。男は何かを見つけたようだ。震えは益々大きくなっている。
「じゃ、失礼。また」
 男は片手を挙げ挨拶すると震える足で中庭に入っていった。
「怖い人」
 ジュンがつぶやいた。感のいい娘だ。あの男、まちがいなく・・・。
 銃声が響いた。悲鳴と怒声が続く。警察署からだ。俺はジュンを屈ませ病院まで引っ張った。ベレッタを引き抜き警察署の中をうかがう。建物に入ってすぐのところには巨乳な受付嬢がいるはずだ。
「病院に入って動くな」
 俺は警察署に向かった。銃声を聞いて大勢の警官が中庭に飛び出していた。誰かが撃たれた様だ。建物に入り受付に向かう。裏口なので受付は建物の反対側にある。
 アリスは受付に座っていて無事だった。だが顔面蒼白で動けなかった。
「大丈夫か」
 ベレッタをしまってから声をかけるとアリスは正面の玄関を指差した。震える声を絞り出す。
「たぶん・・・今のが犯人」
「なに?」
「コートの男が中庭のほうから来て玄関から出てった」
 やつだ。警察署内を堂々と?!
「銃を持ってたわ。古いドイツの銃・・・」
 警官達はみな中庭の現場に殺到しているようでこの玄関口にはいなかった。とにかく追わなくては。
 受付のアリスの後ろには細い鎖がかかった戸棚がある。
 俺はカウンターを飛び越えその戸棚のノブを掴むと力任せに開いた。鎖は簡単に引きちぎれた。中には数丁のショットガンとアサルトライフルが収まっていた。緊急用の武器である。どの警察署にも同様の物は何箇所かに設置されている。
 俺は銃身を短く切り詰められたポンプアクションのショットガンを手に取りスライドを引いた。弾丸は装填されていなかった。横にあった箱から1発玉ライフルスラグ弾を抜き取りエジェクションポートに放り込みスライドを戻す。これで薬室に装てんされ発射準備完了だ。次に散弾タイプのショットシェル00Bを2発つかんで玄関へ走った。
 警察署内はすでに非常ベルがなり騒然としていたが玄関側は至って平穏。警察署前は国道が通っているが車は通常通り流れている。何事かと中を覗き込むのんきなおじさんすらいた。俺がショットガン片手に飛び出してきたのを見ておじさん愕いて転倒していた。好奇心は猫を殺すっていうぜ、おじさん。
 銃下部から2発のショットシェルを装填しながら慎重に辺りを確認する。
 いた。左50mを悠然と歩いていやがった。右手にはまだ銃を握っていた。
 俺はショットガンの木製ストックを肩づけし奴に「止まれ」と怒鳴った。
 すると奴はくるりと反転しこちらに銃を向けた。
 俺は考えるより早く建物側に引っ込んだ。瞬間俺のいた辺りを銃弾が切り裂いていった。わずかに遅れて銃声が轟く。
 俺は低く構えて頭を出し奴に撃った。
 昨日の強盗が使っていたショットガンとは物が違う。切り詰めたといっても2倍近い銃身があり弾丸も散弾ではなく1発玉のライフルスラグ弾だ。このくらいの距離なら十分射程内だ。
 だが奴も俺同様俺が構えた瞬間に建物の影に飛び込みやがった。昨日の連中とは違う。技術も経験もはるかに上の強敵だ。
 ショットガンのスライドを引き排きょう、戻して装填。今度は散弾だ。距離があるから殺すことは出来ないが怪我くらいはさせて足を止めることくらいはできよう。
 俺は射撃のタイミングを計った。
 その時、俺のセンサーに何かが引っかかった。見えたわけではない。勘としか言いようがない。