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③銀の女王と金の太陽、星の空

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私が目をつぶるのと同時に、唇に柔らかい感触が触れる。

一瞬で離れた唇を、お互い見つめ合う。

「色術にかからずに、俺を愛してくれる?」

私は空の両肩に手を置くと、ゆっくりと頷いた。

「空が、好き。愛してるよ。」

笑顔で囁くと、空は私の後頭部を引き寄せて、今度は深く口づける。

初めての深い口づけに、私は戸惑った。

「…んっ。」

思わず身を固くした私の様子でそれを察したのか、空はすぐに唇を離す。

唇は離れたけれど、お互いを銀糸が繋ぐ。

空は私の様子を確認するように、しばらく見つめてきた。

私は色術にかかっていない証拠に、しっかりと空と目を合わせ、微笑んだ。

すると空は、嬉しそうに切れ長の瞳を三日月に細め、そのまま私を抱いて立ち上がった。

足早にベッドまで歩くと、私を下ろす。

「俺…男娼だけど…。」

ベッドへ腰掛けながら、空は瞳を揺らす。

「それは、仕事でしょ?」

これから何が始まろうとしているのか、経験のない私でもわかる。

だから緊張と期待と不安とで、胸が痛いほど激しく鼓動する中、必死で冷静にみせかけるように、あえていつも通りに言葉を紡いだ。

(全身が、心臓になったみたい…。)

「空が男娼なんじゃない。仕事のひとつが、男娼の時があるだけ、でしょ?」

空がそっと私の頬に触れる。

その手は小刻みにふるえていた。

(慣れてるはずの空も緊張してるの…?それとも…。)

「ミント、噛んどく?」

不安そうに瞳を揺らしながら、空は薬袋を取り出す。

私は、そんな空の手を両手で包み込んだ。

「大丈夫。空に惑わされることはあっても、術にはもう惑わされないから。」

空はまた、泣きそうな表情になる。

「聖華…!」

初めて、名前を呼ばれた。

空の艶やかな低い声で、私は掻き抱かれながら何度も名前を呼ばれた。

そのままベッドへ押し倒され、深い口づけが雨のように降り注ぐ。

私も空に応えるように、口づけの合間に空を繰り返し呼び続け、激しい空の思いを受け止めながら色術にかかっていないことを愛の言葉で伝え続けた。

空は私の体の隅々まで、愛おしそうに手と唇で愛し、私の体の緊張をほぐしていく。

私はもう頭の芯がくらくらして、どうしようもない心地よさに溺れそうで、徐々に息が上がり、苦しい呼吸を喘ぎながら繰り返す。

「聖華…ちょっとだけ我慢して…。」

空が荒い息を吐きながら、掠れた声で囁く。

その言葉に空を見上げた瞬間。

「あっ!!!」

空に体の芯を貫かれる。

無理矢理押し広げられながら、突き破られるように、一気に空が入ってくる。

「…くっ。」

空も眉間に皺を寄せながら、歯を食いしばっている。

そしてようやく深くまで腰を沈めた空は、私へ優しく口づける。

「愛してるよ、聖華。」

そして馴染ませるようにゆっくりと動く。

そのたびに痛みと経験したことのない心地よさが生まれ、私は声を上げた。

だんだんと空がいる違和感が和らぎ、どうしようもない心地よさにかわってきたとき、空が体の奥深くを激しく貫いてきた。

お互いに上げる声と荒い呼吸が混ざり合い、いつしかそれもひとつになる。

貫かれる痛みも、激しい律動も、何もかもが愛しくて嬉しくて幸せで、私は空の背中を抱きしめながら、何度も何度も空の全てを受け入れた。



「こんなに…この行為が幸せな気持ちになれるものだなんて、知らなかった。」

空は、汗ではりついた私の頬の髪の毛を耳にかけてくれながら熱の残る瞳で呟いた。

「…初めてだったんだよな、ごめん…。」

私の目尻の涙を、空は口づけながら舐め取る。

私は空の胸に顔を埋めると、大きく深呼吸をした。

「空も、仕事じゃないのは初めてでしょ?」

からかうように見上げると、空も満面の笑みを浮かべる。

「ん。」

私はもう一度、深呼吸をする。

「なに?」

空が目を丸くして、私を見下ろす。

私は空の胸に耳を当てて、目を瞑った。

「空の、香りと音がするから。」

そのまま、空の胸にうつぶせになって、空を見上げる。

「いつも気配すらないのが、今は汗の香りと胸の音、呼吸の音、衣擦れの音、色んな空を感じられるから嬉しくて。」

(恥ずかしくて言えないけど…空と繋がった部分にも、空の余韻が残ってるし…。)

頬が熱くなった瞬間、ぐるりと体が反転した。

驚いて見ると、空がいつのまにか私に覆い被さるようになり、再び私を組み敷いていた。

そして私の首筋に、ちゅっと音を立てながら口づける。

「カモミールの香りが消えてる。」

そう呟くと、次は胸元にも同じように口づける。

「ここも、もう俺の香りしかしない。」

そして妖艶な微笑みを浮かべると、唇に深く口づけてきた。

「いつも太陽王子と同じ香りがしていて、苛ついていたんだ。」

(!)

「空が…嫉妬してくれてたの?」

私が驚いて訊ねると、空は答えずに拗ねたように斜めに私を睨んだ。

「銀河も同じこと言って…」

最後まで言えなかった。

乱暴に口づけられ、長く深く口づけが続いた。

ようやく空の唇が離れた時には、私は頭の芯がクラクラし、全身が熱く疼いていた。

「今は、他の男の名前を呼ぶな。」

そして、また空に愛されるのだった。