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カクテルの紡ぐ恋歌(うた)Ⅷ

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「そのうち松永2佐から話があるかもしれないから、その時は遠慮せずに、自分の希望をきちんと言うといいですよ」
「でも……」
「松永2佐、寂しがりそうですけどね。何しろ『保護者』だったから」
 佐伯は、美紗が直轄チームに来たばかりの頃を思い出したのか、また小さく笑った。そして、「シャワーを浴びてこないと……」と言いながら、どこかへ走り去っていった。
 
 異動の、打診?

 同一部内においては、不定期での異動はさほど珍しいことではない。管理職同士で話がつけば、職員の配置換えは時期を選ばず柔軟に行われるのが常だった。直轄チームに来て一年余りでの交代は、それでもやはり、早すぎるような気がする……。


 美紗は、厚生棟の地下にあるコンビニで小さなサンドイッチを買うと、多くの職員が行き交う地下通路を通って、とぼとぼと来た道を戻った。人の流れに押されるようにして高階層用のエレベーターに乗り、ここ半年ほどの間のことをぼんやりと思い返した。
 年度が変わってから、所掌の地域担当部との調整はほとんど一人でこなし、大きなトラブルもなく過ごしてきたと思っていた。直轄チームの最年少メンバーとして、雑用的な業務も積極的に引き受けてきたつもりだった。それでも、直属の上司である松永の求めるレベルには、やはり至らなかったということなのか。言いたいことはその場ではっきり言うタイプだと思っていたイガグリ頭の彼は、いつから自分をチームから外そうと考えていたのだろう。