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てっしゅう
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「空蝉の恋」 第十四話

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和仁と一緒になったのぞみ号は間もなく東京駅に着く。

「お帰りはいつですか?」

「今日は泊まるので、明日かしら」

「ボクと同じですね。週末で休みになるので、明日はゆっくりできるんです。帰りはご一緒しませんか?」

「ええ?帰りをですか?」

「時間を合わせますので、東京駅に来れる都合をメールしてください」

「そのようなことを言われましても困りますわ」

「新幹線に乗って名古屋まで帰るだけですよ」

「それはそうですが」

「待っていますから、必ずね。もう着きますよ、降りる準備しましょう」

そう言い放って、そそくさと荷物を棚から降ろして、扉の方へ歩いて行った。

「和仁さん~やっぱり困ります」

「切符は買わないでいてくださいよ。ボクが指定席とりますから」

ホームに降り立つと、振り向いて笑顔で手を振って、駆け足で階段を下りて行った。
ちょっと強引に誘われた気分でなんだかモヤモヤしていたが、夫と同行したパーティーが終わって、一人でホテルに泊まるように言われて、自分の気持ちが変わった。
取引先の担当者と二次会の付き合いがあると夫は言った。

今夜は遅くなるのと、明日も仕事があるので朝早いから、お前は一人で泊まって帰れということだった。
私は仕事の邪魔をしようとは思わない。しかし、仮にも妻の立場だ。
夫がたとえ深夜になっても帰って来るのを待って、朝は早く起きて見送るぐらいのことはしたい。

賢明に仕事をしている夫は男性として尊敬できる。
でも、私に対する態度は夫としては悲しい。いや、情けない。
1人ベッドで寝ようとしていた時に、何というタイミングだろう。和仁からメールが来た。

「今夜は一人かな?ボクの事ちょっとは考えてくれると嬉しいなあ~なんて言ってみただけです。明日は何時でも構いませんから、連絡くださいね。佳恵さんへ、おやすみなさい」

涙が出てきた。
嬉しいからではない。
夫が和仁さんとは言わないが、ほんの少しでも優しさをくれていたら、こんな気持ちになんかならないのに、という切なさからだ。

眠れなさそうな予感が襲う。
案の定、眠りについたのは三時を過ぎていた。
チェックアウトの時間直前に目が覚めて、慌てて準備をして、ロビーへ向かった。
カフェでモーニングメニューを食べながら、私の指は住所録から和仁を選んで、タッチしていた。

「おはようございます。今モーニングをしているの。ちょっと寝坊しちゃった。お昼ぐらいの東京発で帰りたいので、十二時に改札の前で待っています」

なるべく明るく振る舞って自分の心を隠したいと思った。
夫へ帰ることを連絡しようと住所録を繰ったが、帰ってからでいいと思い直した。
きっと私がメールしても返事が来ないか、来ても簡単なものに違いないからだ。
レストルームでメイクして、パーティー用に持ってきたやや赤めのルージュを塗って、和仁との待ち合わせに向かった。